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WEEKEND LOG LIFE

 20.山の生活

 1.日曜大工 ベランダ作り

周りに誰も住んでいない山の生活だから、音の出る日曜大工が思いきってできる。電動工具を使うのにも誰はばかることがない。考えてみれば、丸太小屋造りそのものが大きな日曜大工である。そんなわけで、一応小屋が完成すると、次はベランダの延長をはじめた。

やっていることは同じでも気持ちはずいぶん違う。小屋作りは、どこか完成を急ぐ気持ちに追い立てられていた。それから見ると、付帯工事は趣味の世界である。失敗しても作り直しがきく。材料はまだまだ余裕がある。キットにも良さはあるが、この自由さは望むべくもない。

梱包材の中から長尺の板を選び、鉋をかけた。素足に触れるので、面取りもしておいた。基礎の部分だが、昔の田舎屋のように石の上に丸太の柱を乗せることにした。正面部分は小屋本体の大引きにドリルで2箇所穴を開け、同サイズの角材をボルトで緊結した。切り残した立木が、延長部分に食い込む形になったが、良寛の故事に倣ってその部分だけ、ベランダを切り欠いた。

西側には、土台に直接角材を打ちつけ、これで根太(ねだ)を受ける。反対側で根太を受ける材には、自分が切った丸太を使った。根太の上にさっきの板を張っていくのだが、板と板の間を開けたつもりが少なすぎたようだ。完成後しばらくすると、地面から上がる湿気のせいか、板が膨張し隙間が埋まってしまった。これに懲り、東側を作る際には、広い目に間隔をとった。ベランダにも小屋と同じ塗料を塗った。これも反省だが、下からの湿気を防ぐためには、板を張る前に両側に塗った方がいいようだ。

 ベンチ作り

DIY店に1万円くらいでキットが出ていたが、ボルトとナットさえ購入すれば自分で作れそうに思えた。だいたいの寸法を覚えてきて、梱包材で作ってみたら、以外に簡単にできた。少し、板の厚さが足りないところは二枚重ねて使用した。外での食事や、ちょっとした書き物に重宝している。

 2.川遊び 

小屋の前を流れる谷川は、ふだんは水量が少なく、顔や手を洗うには冷たくて気持ちがいいが、泳いだりボートを浮かべたりするには浅すぎる。車に乗って、少し行くと、アマゴ釣りのできる渓流がある。子どもたちが小さい頃は、そこでよく泳いだ。深くて腰までの水量がちょうどよかったのだが、大雨の後、川の流れが変わり、河原がなくなってしまった。

最近は、これらの支流が注ぐ川の上流に行くことが多い。数年前には、日本で最も水がきれいな川という折り紙がついたこともある。近くの人もやってきてはキャンプをしたり水遊びをしたりしていて、ちょっとした人気スポットになっている。

釣りをしないのがもったいないような所だが、カヌー好きにはもってこいの川でもある。水はどこまでも透明で、季節ともなれば、谷の木々の新緑や紅葉が水に映え、目を楽しませてくれる。早瀬や淵にも不自由しない。もっとも、上流では岩場も多く、水の少ない時期には、カヌーを引き揚げ、担いで移動することもある。体力のあるうちに楽しみたい。

 3.読書 

本を読むのならどこでもいいだろう、といわれそうだが、それは違う。自宅は、旧街道沿いにあるが、車が頻繁に通り、人声もする。夜はまだしも、落ち着いて本を読むには昼間は少し賑やかすぎる。一度本を読み出せば、一時間や二時間はすぐ経ってしまう。途中で邪魔されるのは耐え難い。人の来ない山の中は、最高の書斎なのだ。

春や秋なら日当たりの良い場所に、夏なら日陰に、デッキチェアを持ち出してひたすら読む。疲れたら、そのまま昼寝と洒落込む。谷川の水が流れる音や、峠道を行く車の音が遠くに聞こえるのみで、あとは鳥の鳴き声が時折聞こえるばかり。難解な書物もここなら頭に入るというもの。

しかし、当然本の種類は限られる。仕事関係や、世相の類は読めないわけではないが食指が動かない。意外に思われるかもしれないが、詩や小説も今ひとつである。本物の自然が情景描写と干渉し合い、かえってよくない。想像力を働かせるためには、自分の書斎のような限定された空間の方がいいらしい。

そんなわけで、批評や論文、随筆などをよく読む。外国のものは、自然環境が違うためか、情景描写もあまり気にならない。しかし、どちらにしても小説はあまり読まなくなっている。正直なところ面白いと感じる物がないというのが本当のところだ。最近読んだ本では、フェルナンド・ペソアの『不穏の書、断章』がよかった。もっとも、好みによって評価は分かれるかもしれない。   

 4.自然観察 

自然観察というと堅苦しいが、要は近くを散策して、気に入ったものを目に留めるだけのことである。野鳥が好きならバードウォッチングということになる。ベランダの椅子に座るとき、必ず手元に双眼鏡と、バードコールを置いておく。鳥が近くに来たなと思ったら、バードコールを手にとり、よく似た鳴き声をまねしてみる。うまくすれば、近くに寄ってくる。枝にとまるのが見えたら双眼鏡で覗く。野鳥の図鑑類も常備しておきたいものだ。

野鳥に限らず、簡単なスケッチとメモを残す習慣をつけると、観察はなお楽しいものになる。メモを頼りに、次の年どこでどんな花が咲くのかを予想することもできる。写真に撮るのも手軽でいい。鳥よりは花の方が簡単だ。鳥を撮るには望遠レンズがほしい。花ならどんなカメラでも撮れる。日付の入れられるものならメモ代わりになる。あとで図鑑で調べればいい。

余談だが、図鑑はあまり本格的なものよりも、絵本のように絵が大きいものが楽しい。詳しく調べたいなら、最近ではネット上でも検索ができる。手元に置いていつでも広げたくなるような本があれば、自然観察がいっそう楽しくなること請け合いである。

 5.焚き火 

冬の週末の楽しみは、なんといっても焚き火である。夏でも、キャンプのときなど、火をおこすのは悪くないものだが、夜に限られる。冬なら昼間から焚き火をしてもおかしくない。街では、最近、焚き火は許されない行為になっている。燃やすとよくないものが出るからというが、不自由になったものだ。

山だからといって、何でも燃やすわけではない。枯れた木の枝や、掘り起こした木の根など、自然のものに限る。火の色を見ていると、不思議に気持ちが落ち着いてくる。何時間でも燃すものを探してきては焚き火を続けていて飽きないのは何故だろうか。

太古の記憶によるのだという人がいる。火を自由に操ることで、人類は、飢えや寒さ、外敵から身を守ることができた。その安心感が、火の色を見ることで呼び覚まされるのだと。そうかもしれないと思う。人との関係の中で疲れたときなど、週末に山に来て焚き火をするだけで気が安まることがある。知らぬ間に針鼠のように身構える癖がついているのかもしれない。火の前では、それを忘れていられるのだろう。焚き火があたためるのは体だけではないのである。  

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