丸太が何本も並んでくると、いよいよどんな小屋を建てるか、はっきりさせなければならなくなってきた。先に作り始めた二人は、杉丸太をノッチングして作るフルログで作っていた。しかし、実際に取りかかってみると、丸太一本を取り扱うだけでもかなりの時間を食うことが分かってきた。自宅近くに建つ二人の場合とはちがい、往復に二時間かかる事を考えると、ここはすでに加工済みのキットを選ぶしかないのかもしれない。
自宅近くのログハウス展示場にも行って、実際に見てみた。如何せんログに厚みが感じられない。格好だけでは、雨の多い林の中ではとても持たないだろう。各社のカタログを取り寄せて検討した結果、T社のものがいちばん太い材を使っていた。六畳大だが、ロフトもとれ、ベランダも付いていた。フィンランドのパイン材だそうだ。飾り気のない素朴な角ログだが、妙に気に入ってしまった。早速詳しい資料を請求した。
送られてきた図面と、巻き尺を持って山に向かった。図面には基礎を打つ位置が示されていた。まず、敷地の南側の崖から1メートル離れた位置に杭を打った。切り倒した杉の木の先端の方を鉈ではすって、何本か杭を作っておいたのだ。それを基準に四方の隅にも杭を打ち、水糸を張り、だいたいの大きさをつかんだ。考えていたのは三坪だったが、実際に建てるには、足場を組んだりする場所も含めると、二周りほど大きくなる計算である。余裕を見て切り拓いたつもりだが、実際に水糸を張ってみると、ぎりぎりの広さであることがはっきりした。
ベランダの部分だけを張り出して、基礎の上に丸太を継ぐか、それとも、南側の崖をもう少し削るかのどちらを選ぶかだった。崖を削ることにした。基礎はしっかりしたものにしたい。最近の日本家屋のように柱の部分だけに太い材を使い、あとは板で壁を作るのではない。壁全体が何本もの丸太(実際は角)でできているのだ。いい加減な基礎では、狂いが出る。基礎に関しては、本職に頼もうと考えていた。何事によらず、基礎さえしっかりしていれば、あとは努力次第で何とかなるものだ。
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