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WEEKEND LOG LIFE

 16.塗装

 屋外

よっぽど白木のままにしとこうかなと思った。それほどに、木の香漂うログハウスの木肌は美しかった。しかし、いつまでもそのままでいられるものでもない。雨に晒され、日に焼かれ、退色はまだしも腐食のことも考えると、ここは保護のために塗料を塗るしかないと割り切った。

塗料屋さんで相談すると、シッケンズという塗料がいいと教えてくれた。色は、できるだけ自然に近い物を選んだ。塗料屋のおじさんが熱心にすすめるので、少し高いとは思ったが、刷毛も買った。毛の部分の厚さだけで3pはあるという高級品だ。V字になった取っ手のあいたところへ人差し指を入れ、中指と親指で、外側から支えるのがこつだそうである。塗料はかなり粘り気があるので、下に垂れる心配がある。バケツの縁で余分な塗料をこそげ落とし、一気に長く刷毛を横に動かすようにと、助言してくれた。筆を洗うためのシンナーと、マスキングテープを買って、家に戻った。

まず、窓硝子の部分と、布基礎の上にマスキングテープを貼った。脚立を二つ並べて置いた上に踏み板を乗せ、塗料を入れた缶を片手にそろそろと登った。左のいちばん上のログから、教えられた通り、一気に刷毛を動かした。最初に刷毛を置いたところから、塗料がつうっと下に落ちた。それでいて、真ん中辺りはかすれてしまう。それでも、何度か塗っているうちに次第にこつが分かってくる。厚すぎても、薄すぎても塗り直しが必要になる。一度塗ったところを何度も塗らなくていいように、薄く均等に塗ることが大事だ。

四、五本のログを塗ると、足場の板をはずして脚立の一つ下の段に置き換える。いつも、できるだけ腕が胸の前を真っ直ぐに動くようにするためだ。そして、また塗料を継ぎ足した缶を持ち、足場に戻る。塗料を含んだ刷毛は重く、刷毛の柄の角になったところに当たる指がゴム手袋の中で動き、まめが擦れて痛む。

失敗しても目立たないように山側の妻壁から塗り始めたが、軒下の部分や梁など、入り組んだ形になっている妻側は、思ったより手間がかかる。それに、大西さんから借りた大きな方の脚立を使ってもいちばん上に板を渡してやっとという高さである。片手に缶を、もう一方に刷毛を持つと、両手ばなしになる。下手をすれば地面に真っ逆様という高さでの作業は、気も使う。一日がかりで山側の妻壁一枚塗り終わるのがやっとであった。

一日の終わりには、シンナーで、刷毛と缶についた塗料をきれいに洗い落とし、サランラップで、乾かないように刷毛を巻いた。こうしておけば、刷毛がぱさつかず、いつまでも買ったときのように柔らかなままでいると、これも塗料屋さんに教えてもらった。たしかに、指にまめはできたけれど、刷毛の使い心地は満足した。毛に腰があるので、自分の思ったように塗料が延びるのだ。道具はいい物を使うべきだとあらためて思った。

次の日はがんばって、両側の側面の壁を塗ることができた。ログの出入りが少なく、一気に塗れるので、作業がはかどったのだ。正面は、その一週間後。ベランダも含め、屋外の塗装がすべて終了したのは、’94年の勤労感謝の日だった。

屋外の次は、室内の塗装が待っていた。本当は、室内の壁にも塗料を塗るのだが、白木の色を残したくて、それはやめにした。だから、玄関扉を開けると、表と裏で色が違う。はじめは、少し違和感が残ったが、慣れると気にならなくなった。一階とロフトの床には、付属の透明な塗料を三度塗りした。書き忘れたが、屋外の塗料はすべて二度塗りした。これで、三年はもつということだった。

 照明器具

前に注文してあった、照明器具を、いよいよ取り付けることになった。玄関灯は、黒い金属の傘の下に透明な火屋と、その中にやはり透明な電球が入った物。室内には木でできたシャンデリア風ではあるが、電球は普通の白熱灯がついている質素な物を選んだ。中野さんには無理を言って、天井に配線が露出しないようにしてもらった。これで、すべて完成である。

小屋作りを決めたのが’92年の8月だった。小屋の完成したのが’94年の11月26日。この間、休日は、この丸太小屋造りにかかりきりであった。しかし、それは、少しも苦にならなかった。むしろ、喜びに溢れていた。体を動かして、何かを作ることの楽しみを味わうことができたのが何よりだった。お世話になった多くの方に感謝の意を込めて、’95年の年賀状は、新築のログハウスの前で撮った記念写真を使った。その写真は子どもたちが大きくなった今でも居間の壁を飾っている。  


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