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WEEKEND LOG LIFE

 11.小屋組み

 台風

壁積みが終わる頃には、すでに秋の気配が忍び寄ってきていた。小屋の建っているあたりは、この国でも雨の多い地方で、それまでにも雨には降られてきている。しかし、台風となると話は別だ。天気予報やテレヴィのニュースをいつもより真剣に見た。どうやら週末に上陸するらしい。四隅をがっちり組み合わせてあるログ本体は大丈夫という自信があった。けれど、まだ半分近く積み上げられたままの屋根その他の部材や、ログの中に入れてある建具が気がかりだった。

土曜日の午後、かなり雲の行き来が忙しくなった空の下を、山に向かって車を走らせた。小屋に着いた頃には、すでに雨足は激しくなり、風も強さを増してきていた。車の中で合羽に着替え、外に出ると.、そこだけ、灰色の雲が見える小屋の上の空では、杉の木の先端が大きく揺れ、今にも内側に倒れそうな気がするほどだ。

まず、雨仕舞い用のシートで屋根その他の部材を包み、崩れないようにロープで縛った。それから、小屋の中にしまってある建具を、これも倒れてこないように、ロープで壁際に固定した。そうしておいて、前に切り倒した丸太を小屋の真ん中に立て、その上にシートをかぶせ四方の隅をロープと杭で地面に固定した。これで一応小屋を覆ったわけだが、嵐がひどくなれば、シートは飛ばされてしまうかもしれない。ただ、両側を山に挟まれた土地だけに、うまくいけば、風はかなり防いでくれるはずだ。心は残ったが、やれるだけのことは済ませたので、暗くなってきた山を後に、家に帰った。

台風が去った後、すぐに山に行った。被害はむしろ、小屋の前を流れる谷川に集中していた。雨台風だったせいか、水の流れは予想外に激しく崖をえぐり、路肩が崩れてしまっていた。護岸も兼ねて植えられた欅が、川の中にぽつんと残っているのが、水の勢いの激しさを物語っていた。

小屋の周りは荒れてはいたが、本体は予想通りびくともしていなかった。建具も無事だった。やはり、ここでは、風より、雨の心配をしなければいけないことを痛感した。裏の崖もかなり土が崩落してきていた。幹線道路から小屋に至る峠道では一部、土砂崩れの復旧工事をしていた。前の道が流されななかったのが不思議なくらいの大雨だったのだ。
 

 妻壁

17層目のログの上に、梁を通した。この梁が、二階の床を支えることになる。ログハウスは、法律上完全な二階を作ることができないらしく、ロフト(屋根裏)という扱いになる。もっとも、この小屋の場合は立てば屋根に頭をぶつけてしまう、本当の屋根裏なのだが。梁を通したことで、上での作業の足場が増えた。反対側に移るのに、小屋の真ん中を通ることができるようになったのだ。

21層まで組み上げると、基礎からの高さは3メートルになる。崖側は山の斜面が見えているのでそれほどでもないが、玄関側は地上からの高さは5メートルはある。下を見ると、正直怖い。しかし、その一方で、次第に高くなってくる壁を見ると、よくできたものだという感動が胸の裡に湧き上がってくるのも事実だ。真新しい木の壁の上に日が射すと、何ともいえず美しく、作業の手を休めて見ほれてしまうのも度々だった。

妻壁の作業は、それまでとが違って、微妙な調整が必要になる。屋根勾配は、底辺を10とした場合高さが7という平均的な角度である。当然ログはすでにその角度に合わせてカットされている。一本でも浮き上がると、屋根を張るときに隙間が生じることになる。けれども、ログ同士の噛み合わせがないだけに、またダボに頼るしかない。少しきつめのダボをハンマーで打ち込むことでログ同士を緊結していった。

22層目からは、ロフトの窓の開口部が出てくるので、ただでさえ不安定なログが、いっそう短くなる。当然ダボの数も減るわけで、ログ同士のつながりも弱い。23,24層で母屋(もや)が通るまで、かなり不安だった。二本の母屋が両妻壁のログと噛み合うことで、それまで不安定だった妻壁も安定した。後は棟木を上げるのみである。

棟木はちょうど30層目に乗った。小さな三角形の切片をスクリュー釘で棟木に止めると、妻壁の完成である。外国映画でよく見る建てかけの家によく似た、屋根のない家の形ができあがった。斜めにカットされた部分に10センチのスクリュー釘を打ち、下のログに固定していった。後は屋根を張るばかりである。はやる心を抑えて、この日の作業は終えた。

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