いよいよ本格的な作業に入る。その前に、届いた部材を整理しながら確認した。T社から送られてきたマニュアルによれば、次の通りの部材が届いているはずである。
・床‥‥‥‥‥‥大引き、床板
・壁‥‥‥‥‥‥ログ部材、あて木、巾木、通しボルト、ダボ、シーリング材
・屋根・天井‥‥・梁、野地板、幕板
・建具‥‥‥‥‥木製扉、木製窓、建具額縁、金物一式、ガラス(3o)
・バルコニー‥‥・床板
実際のところ、どれがどれだかよく分からないのだが、寸法と照らし合わせていくと、どれも少しずつ余分に入っていた。失敗することをあらかじめ計算に入れてあるようだ。北欧では、セカンドハウスとしてのログハウス作りは、素人が日曜大工でやるものと相場が決まっているらしい。マニュアルも向こう仕様のものを翻訳してあるだけである。部品の大きなプラモデルといった感覚なのだろう。鷹揚なものである。
まずは10センチ角の大引きを基礎の上に運び、アンカーボルトの位置に合わせてドリルで穴を開けていった。作業開始ということで、Mさんが手本を見せてくれた。要は腰の安定だと分かった。相撲の股割りのように、ぐっと腰を下ろし、足に力を入れることで、刃先が安定するのだ。それさえできれば、ドリルでの穴開けは楽しい作業である。あっという間にすべての穴を開けてしまった。
そうそう、ドリル一式、電気鋸、電気鉋、それにチェーンソウといった道具はDIYの店で買い揃えた。広告を見て大安売りの時に買っていったので、どれも1万円以下のものばかりだが、いまだに重宝している。電動式の大工道具なしでは、ちょっと大変だったろうと思う。ありがたいものである。鑿や玄翁は家にあったものを使ったが、両刃鋸は新しいものを買った。最近は目立てのできる人もいなくなった。鋸は切れなくなったら新しいものを買うよりない。その代わりうれしくなるほど切れ味はよくなる。
アンカーボルトを通す穴の周りに、座金とナットを埋め込むために座堀りをした。鑿を入れるとき、刃を逆さまに入れると、こじるときに刃をこぼすから気をつけるようにとMさんにいわれた。中学や高校で木工というのをやったはずだが、鑿の使い方など覚えていない。油を引いた布でしっかり巻いてあったので新品同様で道具箱に収まっていた。親父が中学生には不釣り合いなほど上等の道具を揃えてくれてあったのが今頃役に立ったわけだ。当時は、道具箱が友達の二倍もある大きさなのがはずかしく、必要なものだけを袋に入れて通ったのを覚えている。鑿や切り出しの柄に、左利きだった親父が彫刻刀で彫ってくれた名前が今も残っているのが、懐かしい。
座堀りには少し時間がかかった。全部掘り終わり、座金とナットを入れ、スパナで締め、この日の作業は終了した。土台の完成である。
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