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SCANDINAVIA
オスロ市街

 2005/8/16  オスロ

ラルダールの町は小さかった。家のつくりも総じて小体で、ホテルもコテージ風に何棟かに分かれていた。庭に面してバルコニーがあるのは、ハダンゲル・フィヨルドのホテルと同じだが、部屋も浴室も小さく、快適というにはほど遠いものだった。小さな町で他にホテルがあるようにも思えない。古くてもなんとかやっていけるのはそういうことなんだろう。

フィヨルドの旅も終わり、オスロに帰る日。早い朝食をとった。お馴染みのヴァイキングは、ハムやチ−ズのような冷たい物ばかりが並んでいて、卵やベーコンは、食べ始めたころようやく用意ができてきた。夜討ち朝駆けの旅は慣れっこだが、山峡の町は日が差してくるのが遅い。ホテル前の大通りにも人通りはない。こんなに早朝から働かされては従業員もたいへんだろう。

往きに通ったゴールまでは、ちがう経路をたどるが、山越えであることは変わらない。雪どけ水を集めた清流沿いを遡行するうちにボルグンドという村に着いた。低い石垣に囲まれ、見馴れた黒い塔が見える。スターブ教会だ。ゴールの物とはちがい、ここの教会は現存する数少ないスターブ教会の一つ。近くに真新しいヴィジターセンターが建っていた。

山道を登り切ると、森林限界線を越えた。緩やかな傾斜を見せながら岩と草地ばかりが目立つ台地が続く。フィヨルドのある西海岸地方ではメキシコ湾暖流で温められた空気が高い山地にぶつかって雨を降らせやすい。西海岸から離れると、爽やかな初秋を思わせる澄み切った大気がもどってきた。雲ひとつない空からは容赦なく夏の太陽が降りそそぐ。乾いた空気が紫外線をそのまま通すからか、目や肌が刺されるように痛い。

同じ台地も晴れ渡った空の下で見るとひと味ちがう。青空を浮かべた池の畔にぽつりぽつりと丸太小屋が立ち、たるんだ電線が遙か遠い山の端から続いている。バスの中にはグリーグの「ペールギュント」が流れている。厳しい中にも人の営みの見えるノルウェーの自然の中を走りながら聴いていると、聴きなれた曲がまた新しいイメージを持って立ち現れてくる。道は少しずつ下っている。万年雪の残る台地が上方へと遠ざかり、針葉樹の林が眼下に見えはじめた。

 オスロ

フログネル公園

ノルウェーの夏は短い。3週間にも及ぶ夏休みを山の別荘で過ごした会社員や学生が戻り、オスロの街はふだんの顔を見せていた。121人の男女が絡み合うモノリスで有名なフログネル公園にも、短い夏を惜しむように、白い肌を惜しげもなく露出した女性の姿が見受けられた。広い公園内は木陰も多いが、芝生に寝ころんでの日光浴がこちらの習慣らしい。空は透き通るように青い。さらっとした空気の中では汗もかかない。たしかに気持ちよさそうだ。紫外線対策が叫ばれるこの頃だが、日を浴びる心地よさには勝てないのかも知れない。

オスロフィヨルドに面して建つ市庁舎は、ノーベル平和賞の授賞式が行われることで知られている。円形をしたフィリッチョフ・ナンセン広場前の長い階段を上がると、そこがセントラルホール。広いホールの四つの壁面はノルウェー人アーティストによる壁画で飾られていた。奧の方の窓はピベル湾に面していて、繋留されている帆船のマストや帆綱が青空を飾っていた。正面が円形広場、背面は港というロケーションには、市庁舎の果たす象徴的な役割がよく生かされていて見事である。

 DFDSシーウェイズ

DFDSシーウェイズ

市庁舎から王宮まで行き、カール・ヨハンス通りのにぎわいを見ながらビヨル湾にあるフェリー・ターミナルに戻ってきた。このあと、オスロ、コペンハーゲンを結ぶDFDSシーウェイズに乗船し、船で一夜を過ごす。翌朝はデンマークというわけだ。はじめての船旅である。

船はもう港に入っていた。想像以上に大きな船で驚いた。CROWN OF SCANDINAVIAと船腹にある。乗船券に船室番号がある。6階332号室。海の見える側のはずだ。タラップを渡り、乗船した。タラップのあるのが5階だから階段を上がる。332号室は客室としては一番前の突き当たりだった。

ドアを開けると窓の向こうに桟橋が見えている。窓に向かって左手にソファ、右手にベッドが用意されていた。両側とも折りたたみ式のベッドが上部から引き出せるようになっている。ドアの左にクローゼットと化粧台。右がシャワールームとトイレである。二段ベッドにもちゃんとベッドサイドランプがついていて本が読める。広くはないが合理的で使い勝手がよさそうだ。

荷物を整理したら船内の探検である。6階船室の前部はサウナやプール等の施設があった。7階にはインフォーメーションカウンターや両替所、免税店の他に映画館が2館。他にディスコもあり、バーやレストランはお好みに応じて数種の店を開いている。また甲板には前後部に別のカフェが開いていて、最上部ではバンド演奏が行われていた。

海側船室とはいえ、湾の外に出てしまえば見えるのは水平線ばかりだ。オスロフィヨルドを航行する景観を楽しもうと上甲板は出航前からたいへんなにぎわいになっていた。舷側の手摺り際に隙間なく並んだデッキチェアには、ビール片手にほろ酔い気分の客や、タトゥーの入った毛むくじゃらの背中を見せて日光浴を楽しむ客、と出航前の浮き足だった気分が感じられた。

汽笛とともに桟橋を離れた船は静かにビヨル湾を出ていく。湾内にいたヨットが数艘しばらく帆走し、別れを告げている。去りゆく船を追いかけて鴎がすぐ傍らを飛ぶ。オスロフィヨルドの眺めは、両側にいつまでも続き、新市街の高層ビルや遠くのルネッサンス風の建築と見飽きることがない。しかし、夕暮れの風は少々寒い。早々と下に下りることにした。

大勢の客が一度に食事をとることはできないので、何度かに分けての夕食になる。ファースト・シッティングは5時45分。アンフォーマルな装いでいいレストランで、ヴァイキング形式の夕食である。ネクタイはいらないというが、せっかくの晩餐。パパスの立ち襟のジャケットを着用した。これならフォーマルでも通用する便利な一着。

魚介類が豊富な国。船とはいえ多種類のメニューが並ぶ様は壮観だ。ワインリストもあった。ボルドーの赤でムートン・カデというワインを頼んだ。デンマークの通貨で払うからか、ノルウェーよりは安いように感じた。食事の後、免税店で土産物などを買い、部屋で一休み。その後、バーにでも繰り出そうと話していたのだが、旅の疲れが出たのか、妻は眠ってしまった。しばらく、時間をつぶしていたのだが、いっこうに起きてこない。そのうち、こちらも眠くなってきて寝入ってしまった。

夜半に目を覚ましたとき、星空だったら妻も起こして甲板に出ようと思っていたのだが、残念ながら雲がかかっていた。揺れも出てきていたので、着替えて本格的に寝ることにした。せっかく楽しい機会を用意してもらいながら、もったいない船旅であった。

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