2006/6/14 anniversary
早いものでHCCが結成されてからもう一年たつ。結成のきっかけになった伊勢志摩ツーリングに立ち会った縁もあり、6月11日に行われる一周年記念例会に参加表明していた。メンバーが重なるMCCの六月例会も相乗りすることになったので、総勢三、四十台は集まる予定だ。体調はあまりすぐれないが、妻が一人で行くと言わないので、助手席に座ることにした。天気予報では晴れだったが、土曜日の午後、妻が車を洗っていると、ぽつりぽつりとあたり出した。
雨は日曜の朝になってもやむ気配を見せない。久しぶりの雨中ドライブ。針テラスまでは二時間近くかかる。こういうときでもなければ見ることのないDVDを用意した。仕事の都合で行けなかったストーンズの来日公演だ。プレーヤーのない我が家でDVDを見ようと思ったら、カーナビしかない。ミックの体形の変わらないのに驚いたが、狭い車の中で小さいナビの画面を見続けていたらなんだか気分が悪くなってきた。
針に着くころには雨も上がり、大駐車場にコペンが集まっているのが見えた。外に出ると、梅雨寒というのか、半袖ではがまんできず、麻の上衣の前を掻きあわせて、話の輪に加わった。といってもほとんどが顔は知っているというくらいの関係で、特に話しかける相手もいない。腕組みして周りを見てたら、前回の針テラスでいっしょにお昼を食べた○さんが、話しかけてきた。
「ふだんは何に乗ってるんですか?」
「え、ああアルファロメオ。」
別に悪いことをしてるわけではないのだが。自慢しているようにとられやしないかと、ついつい小声になる。
10時30分針テラスを出発。道の駅御杖を目指す。この間月ヶ瀬に行ったとき通った道だ。ほとんど通る人もない道だからムカデには最適だと思ったが、HCCには走り屋も多い。もたついていると先に行かれてしまって、せっかくの32台がつながらない。結局間に一般の車が何台か入ったまま、数台ずつのムカデにしかならなかった。
御杖で一度集まってから曽爾高原に向かうときも、走り屋集団は飛ばす、飛ばす。それぞれのクラブにはそのクラブの嗜好がある。HCCは隊長のハリソンさんの人柄に惹かれて多くの人が集まってきている。メンバーの中には、スピード狂もいれば、改造マニアもいる。それぞれ、他人に迷惑をかけない限り干渉しないのが流儀。速く走りたい人は先の方を、ゆっくり走りたい人は後からと決めている。けれど、せっかくこんなに大勢そろったんだからみんなでゆっくりつるんで走っても楽しいだろうに、と思ってしまう。
曽爾高原にこれだけの車が停められるのか心配していたが、はっきりしない天気のせいか、駐車場はがらがらだった。まずは腹ごしらえ。山小屋風のレストランは、昼食時と重なって36人が一気に食事をするスペースがない。席が空くごとに中に入る。日替わりランチは白身魚のフライと若布スープ。それにサラダとヤーコンの粕漬けがつく。妻は海老フライ。早く入ったので先に食べ終えたが、最後の組が食べ終わるまでコーヒーを飲んで時間をつぶした。
食事の後は、おまちかねの温泉。曽爾高原には去年「亀の湯」という温泉ができた。いわゆる「美人の湯」系のつるつるした泉質が人気だ。ただ全体に狭く洗い場も少ないので、薄の咲く頃はハイキング客でたいへん混雑する。この日は、あいにくの曇り空で、先客は少なく、温泉好きのメンバーは広い露天風呂の好きなところに陣取り、果てしなくしゃべり続けるのだった。
夢さんがかけ流しの源泉を勧めるので、のたりさんと、屋内の源泉でしばし歓談。コペンも好きだが、他の車も好きというのが三人の共通点。車談義で盛り上がった。
「前の車にくっついて、アルファのグリルが映るのを眺めるのが好きなんですよ。」
と言うと、夢さんが、目を細めながら言った。
「コペンでも同じ。パネルトラックの後ろにくっついて映してますよ。」
自分の車の前って自分では見ることができないからね。
その後、露天に移って他のメンバーに合流。コペンに至るまでの車遍歴を聞いていると、GTRを何台も乗り継いで、RX7、その後がコペンという「苦労猫」さんを筆頭に、みんな、かなり走り込んできているようだ。コンパクトスポーツを名乗ってもコペンは軽自動車である。GTRとは比べものにならないだろう。そう思って聞いていると、コペンの秘密はどうやら軽さにあるようだ。ホイールベースが短くて、取り回しもいい。峠道なら大排気量の車よりも速い、というのがこの日の結論だった。
サウナに入って、汗をかいた後、露天に戻ると、まだまだ話ははずんでいた。ふだんは、駐車場でずっと立ち話をしてるのだから、露天風呂に浸かりながら話す方がそれは楽しいに決まっている。しかし、これ以上入っているとのぼせてしまう。先に出ることにした。案の定、ロビーで妻が待っていた。圧倒的に男性のメンバーが多いから、女湯は少しさみしいかもしれない。
体調、その他で温泉に入らなかったメンバーは、ずっと足湯のところで歓談していたようだ。近づいて行くと、なんとお湯がない。ウィークデイだけお湯が入るらしい。ご丁寧に靴を脱いで入っているので、本当の足湯だと思って、他の客が何人もやってきては怪訝な顔をして帰っていく。悪い冗談だ。
みんなが揃ったところで、青蓮寺湖まで走った。今度はかなり長いムカデになったが、つまらないのは、見物客がいないこと。人の多いところを走ってこそ、ハレをするのだが。今回の幹事は温泉好きのナハナハさんだから仕方がないか。ダムの駐車場で、ちょっとした抽選会をして解散。和歌山のmiieさんが人数分用意してくれたカフェオレ大福が秀逸だった。冷凍してあって、昼の曽爾高原ではまだ堅かったらしい。大福の皮の中からカフェオレが出てくるというのは泣かせる趣向である。甘くないので、左党でもいける。
解散後、以前お昼を食べたログハウスの喫茶店に寄るメンバーと別れ、名古屋方面に帰る四台が、のたりさんの先導で一緒に帰ることになった。名古屋から来ている親子さんが、
「大阪の人たちってムカデが好きじゃないんですね。すごく飛ばすからついていけない。」
と笑いながらこぼすのに同感した。そこで四台はゆっくりムカデで名張市街を抜けた。飛ばすのも悪くはないが、人の眼を意識して走るのもやはり愉しい。
名神に乗るヨーキーパパさん、青山高原を抜ける親子さんと途中で別れ、のたりさんの通勤経路を辿って最短距離で松阪まで帰ってきた。地図上では最短なのだろうが、ナビにはないような道だから、今度自分たちだけではきっと同じ道では帰れないだろう。それにしても、この道を毎日オープンで往復しているのか、とあらためてのたりさんの「健脚」ぶりに感動したのだった。
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