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DAYS OF COPEN

 2006/3/21 紀伊長島

イグニッションキイを回すのだが、キュルキュルと力ない回転音が二、三回すると止まってしまい、何度回しても、エンジンがかからない。アルファでは何度かあったが、コペンでは初めてのこと。運転席の妻があせっているのはそのうわずった声で分かる。
「どうしよう。間に合わないよ。」
19日の日曜日、朝9時のことだ。この日はMCCのオフ会。道の駅「大台」に10時20分集合だった。一時間前に出発すれば楽々と思っていたが、エンジンがかからなければどうしようもない。

ボンネットを開けて、バッテリーを調べてみた。見たところバッテリー液は切れてない。運転を交代してキイを回してみる。なるほど手応えが弱い。しかし、何とかできそうな程度の反応はある。マニュアル車のように、アクセルを踏み込みながらキイを回すと、何度か試すうちにエンジンがかかった。そのまま、運転を交代して一番近いスタンドに急行した。

給油の後で、バッテリーチェックをしてもらうと、「要注意」という判定が出た。買ってから、まだ二年たっていないのだが、サービスマンの話では、新車の時点であまり高性能のバッテリーを積んでないことも多いらしい。レガシィの場合、10年乗って一回交換しただけだったが、たしかに交換するとき、バッテリーの値段の高さにおどろいた記憶がある。「エアコンのことがあるから夏までには換えた方がいいですよ。」とおどかされて、スタンドを出た。

フィアット・バルケッタ半時間ほどロスをしたが、道の駅「大台」には定刻10分前に着くことができた。駐車場入り口で反対車線からグリーンのコペンが近づいてきた。紀伊長島から参加表明していた十六茶さんらしい。奧の方にのたりさんと夢さんの車が並んで停まっているのが見えたのでそちらに移動した。十六茶さんはムカデ走行がはじめてということで興奮していた。待つことしばし。次々と参加車が到着した。前回の鳥羽オフに来ていたバルケッタさんが弟さんを連れてきた。なんと、車はアルファロメオ・スパイダー。あと、ロードスターが一台。車好きの人ばかりなので、コペン以外の車でも大歓迎なのだ。

地元の十六茶さんを先頭にムカデで道の駅マンボウに向かう。ぽつりぽつりと雨が当たり出したが、全員フルオープンの構え。花粉症が気になったが、仕方なくトップを開けた。走り出してしばらくすると、雲が割れ、日が差しはじめた。前にバスがいるのでスピードは出ないが、オープンカーが10台並んで走るとなかなか見応えがある。まったりを表明しているMCCだが、やはりつるんで走るのは愉しい。

荷坂峠を越えると紀伊長島の海がいつものように空の高みに光って見えた。いつ見てもこの眺めは素晴らしい。峠の坂道には淡紅色の桜がひときわ鮮やかな色を見せて咲いていた。ほどなく道の駅に着いた。あいかわらず車でいっぱいで、大型車の方に回る。小さいコペンなら縦列で3台ずつ停められる。先に来て待っていた2台も合流し、自己紹介が始まった。20代から50代まで、年齢も性別も異なる人たちが、いっしょにだらだらとしゃべっている図柄は傍から見れば、少し可笑しかろうが、本人たちはいたって平気。

軽トラのおじさんが、車から顔を出して話しかけてきた。
「めずらしいねえ。オープンカーばかりって。みんな金持ちなのかい?」
「そんなことないですよ。みんな車が好きなだけで、こうやって集まって走ったりしてるだけで愉しいんですよ。」
「いやあ、見てるこちらも楽しいよ。」
と、おじさんはずらりと並んだ車を長い間ながめていた。

大型の駐車場に停めたので、熊野古道観光のバスが止まるたびに大勢の観光客がこちらを見ながら話しているのが聞こえた。お年を召したご婦人が「今度はこの車に乗ろうかしら」なんて言ってるのを聞くと、なんだかうれしくなってくる。大台では母親に抱かれた子どもが、コペンを見て喜んでいた。なんでもトミカを集めているのだけど、コペンが一番のお気に入りなのだそうだ。老若男女を問わず愛される幸せな車である。

ムカデ走行でお好み焼き屋へマンボウの料理はけっこう気に入っているのだが、ちょうど昼時で席が空いていなかった。十六茶さんの紹介で、お好み焼きを食べた。一軒目が混んでいたので二軒目だったせいか、味はいまいち。しかし、この日は日本対韓国戦の日、テレビはちょうどWBCを中継していた。7回、膠着状態だった試合に変化が生じた。松中のヒットから日本が5点とった。イチローのヒットまで見届けてマンボウで待つのたりさんたちに合流した。

おじさんたちは野球が好き。日本が勝ちそうというのを聞くと、夢さんが携帯で奥さんに電話してその後の展開を確かめた。あの後、一点追加したらしく、6対0らしい。勝利はまちがいないだろうとみんなで喜び合った。特別ナショナリストというのではないが、イチローならずとも3タテというのは、ちと情けない。サッカーについで野球でも韓国に勝てなければ、日本には何が残されているのかという気になってくる。

たかが野球だが、相撲も外国人力士ばかりが話題になる昨今。野球まで韓国に破れて敗退ということになれば、反感が高じて何かと問題が多い対アジア外交にひびくことにもなりかねない。これで、日本人のプライドも保たれて、余裕を取り戻せるというものだ。「臆病な自尊心、尊大な羞恥心」というのは中島敦が自分に下した評価だが、そのまま我が同胞のメンタリティーを表す言葉として使える。髭面のサムライたちに託した思いには熱いものがあったのである。

帰りはバルケッタさんに教えてもらった260号線を通って帰ることにした。山あり海ありの起伏に富んだ景観が認められて「日本の道百選」に入っているという。なるほど、峠の道から眼下に広がる南勢の海は、コバルトブルーそのもの。静かな水面には筏や小さな島々が浮かび、多島海独特の景観が美しい。同じ方向に帰るのたりさんや青コペンさんと分岐ごとに手を振って別れるのも余韻があってなかなかいいものである。次回は是非147と2台でと誘われている。

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