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DAYS OF COPEN
メルパール登茂山屋外テラス

 2005/6/12 登茂山

「はい、お仕事持ってきたわ。細かい手作業、苦手なのよね。」
書斎で読書中のところに、何やら白いものを持って妻が上がってきた。めずらしいことに、さっきまで、駐車場で車を洗っていたはずだが。本の栞ほどの大きさの紙に、裏紙がついている。手にとってよくよく眺めてみると、アルファベットが幾つか並んでいる。大きい方の文字はTCC。つまり東海コペンクラブの略称だ。その横に小さい文字が3段でTokai Copen clubとある。

この間クラブの仲間から送ってもらったステッカーにちがいない。文字の部分だけ残して周りの紙を剥がした上で、その上からまた糊のついた透明シートを貼る。そうして貼りたい部分に持っていて仮留めをし、裏紙を剥がすという手間のかかる作業手順だ。自分でやる気はまったくないらしい。仕方がないので、カッター用の作業板を用意し、オルファ社製の新聞切り抜き用のカッターを出した。これだと裏紙を切ることなく上のシートだけ切り抜くことができる。

文字だけが透明シートに残ったところで、下に降りた。駐車場では久しぶりに洗ってもらったコペンが待っていた。トップを開け、リアの側から手を伸ばし、シートとシートの間に設置された巻き込み防止用のアクリル板の上にセロテープで仮留めした。そうしておいて、ゆっくり裏紙を剥がしていくと、透明なアクリル板の上に白いTTCの文字が浮かび上がった。小さい気泡を指で押して、空気を抜き密着させると、できあがりだ。

昨日の雨が嘘のように、空は晴れている。車もきれいになったことだし、ちょっとそこまでドライブすることにした。行き先は決めてある。志摩市にある登茂山だ。何年か前に大型の保養施設ができた。大きなプールと温泉つきである。メルパールという名前からして、郵政関係だろう。郵政民営化を前にして、現在の利用状況を調べるほど暇ではないが、海を見下ろす高台にある温泉というのは、ちょっといいかも知れない。

リアス式海岸で有名な志摩半島だ。朝熊道を抜けてパールロードを通り、途中展望台で海を見ながらのランチ。いつもなら料金所の手前で引っ返すところを、そのまま的矢に出て、志摩スペイン村の横を通り登茂山を目指すというコース。以前大王崎に行ったときに通ったコースだが、ムカデ走りの練習を兼ねて今回は妻がハンドルを握る。京都、滋賀あたりから来週またお仲間がやって来るらしい。

朝熊道はすっかり夏の装いだった。緑濃い山の中を縫うようにして鳥羽に出た。水族館前の道は子ども連れの観光客でにぎわっている。チューリップハットや日傘を横目にパールロードに入った。入り組んだ海岸線に沿って道がくねくねと続いている。海も夏の色をしていた。展望レストランの窓からはパノラマ状に海が広がっていた。雲のない空を映して藍色がかって見える。バルサミコ風味のポークカツと烏賊のリゾットをオーダーしたが、リゾットは切らしているとのこと。シーフードカレーに換えた。バルサミコは意外に豚によく合っていた。

登茂山には広い公園があり子どもが小さい頃に来たことがある。そこに至るまでに新しい道ができていて、その道を少し行ったところに巨大な建物が見えた。国際会議場まであると案内板にあった。ほんとにこんなところで国際会議が開かれるのだろうか。駐車場に車を停めて目指す温泉まで歩くのだが、これがなかなか遠い。

温泉だけの利用は千円だが、タオルとバスタオルがついていた。更衣室が狭いと思ったら、浴室も狭かった。静かな湾を臨む浴槽からの眺望はなかなかだが、洗い場が暗い。この頃、サウナがお気に入りだ。5分用の砂時計をセットして、ひたすら汗の流れるのにまかせる。水風呂に入った後は、露天風呂に。階段を上がった屋上にあるのだが、周囲の施設から目隠しをするための板塀が邪魔で、せっかくの景色が見えないのはもったいない。肝心のお湯は、匂いもなくあまり温泉っぽくない。しかし、誰もいない露天風呂の貸し切りというのは悪くない。燦々と降る陽を浴びて手足を伸ばせば天上にでもいる気分だ。

相変わらず長風呂の妻を待つのに絶好の場所を見つけた。休憩室の向こうがテラスになっていて、デッキチェアが置かれている。雨風に晒された白木のデッキチェアに横たわると、目の前に夏の空が広がっていた。かき氷の底にたまったみぞれのように頼りなげな雲の切片が蒼空の上に漂っていた。じっと見つめていると空に吸い込まれてしまいそうだった。だるい手足を海風がそっと撫でてゆく。なんだか大型船に乗っているような気がしはじめていた。


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