古市

「郷土史研究家 濱口主一の世界」展
令和4年度 第22回前期特別企画展
2022/05/03

令和4年度 第22回前期特別企画展
「郷土史研究家 濱口主一の世界」展

目的

 この度、伊勢郷土会会長の濱口主一氏が卒寿を迎えられるにあたり、ライフワークとされてきた郷土史と文化財の調査の記録を展示させていただきます。伊勢の歴史的遺産を広く周知するとともに、氏のひたむきな郷土愛を感じていただきます。

 濱口氏は伊勢市役所在職中、「伊勢古文化同好会」(後に伊勢郷土会と改称)の設立に参画。常任幹事として39年間、事務総括一切を担当されました。「伊勢郷土史草」の創刊、市内各地区の古地図の復刻、北園克衛詩碑・生方たつゑ歌碑建立、郷土先人遺墨集・遺作集の作成などに携わり、郷土の歴史と文化の記録を残すことに尽力。伊勢市史編さん委員会委員、伊勢市文化財調査会会長も歴任されました。

 中でも氏は、石造遺物に造詣が深く、県教育委員会の要請で伊勢市近辺の石造遺物の調査が行われた際は指導の中心的な役割を果たされ、「伊勢郷土史草」にも度々原稿を寄せられています。また、中日新聞(伊勢志摩版)に10年間執筆したコラム「ふるさと再発見」は一冊にまとめられ、郷土に集積された各種の遺物や文化の背景を学ぶ貴重な資料となっています。

 こうした氏の半世紀以上に渡る文化財の調査研究、執筆活動、講演など多くの功績は実に輝かしいものがあり、伊勢の郷土史を語る上で欠かすことのできない存在として高い評価を受けています。
 今回の企画展では、これらの研究資料の一部を、写真、刊行本、パネル解説などでご紹介し、氏の幅広い造詣を伺うと共に、伊勢の郷土史の奥深さを感じて頂けるものと確信致しております。


場所

 伊勢古市参宮街道資料館 [ 地図 ]
 〒516-0034 三重県伊勢市中之町69
 TEL/FAX 0596-22-8410 TEL


期間及び開館時間

 令和4年5月3日(祝)〜 5月29日(日)
 9:00〜16:30 最終日は15:00まで
 休館日:月曜日及び月曜日が祝日の時はその翌日


主な展示物

 パネル版、写真、刊行本


濱口主一氏のこと

阿形次基 2022・3

 濱口氏は、伊勢郷土会の前身である伊勢古文化同好会(1969設立)が発足した当時から参画し、常任幹事として平成20年(2008)4月26日までの39年間事務総括一切を引受け、平成20年(2008)4月26日、間宮忠夫会長の勇退により、後任会長として就任し、2020年4月までの12年間勤めていただき、現在は名誉会長として伊勢郷土会に助言をいただいています。濱口主一氏は、これまで伊勢郷土史草の創刊(1973)、各種古地図の復刻、北園克衛詩碑建立(1980)、生方たつゑ歌碑建立(1992)、郷土先人遺墨集・遺作集(記念葉書)作成等に関わり、『宇治山田覚書・谷口永三(2010)』及び『間宮忠夫遺稿集~伊勢山田の探求~(2012)』を編集刊行するなど郷土の歴史と文化の記録を残すことに貢献してきました。中でも氏は、調査対象物に関して常に現地に赴き確認し、今までの資料と合せて検討し、原稿まとめあげる、そういった成果は、過去にも『伊勢山田句碑集覧(2005)』としてまとめられました。
 また、氏は、中日新聞(伊勢志摩版)の連載に取り組み、平成13年(2001)1月20日から始まり、平成22年(2010)12月25日までの9年11ヶ月、100回連載を続けてきた努力には深く感銘を受けました。この中日新聞に連載した氏の「ふるさと再発見・伊勢山田散策」も刊行され、地元の貴重な記録となりました。氏は、カメラも得意で、この本の中の写真は全て氏の撮影したものであります。
 氏は、これまで元伊勢市文化財保護審議会会長・元伊勢郷土会会長として活躍され、郷土史や文化財に精通し、特に石造遺物に造詣が深く、伊勢郷土会が発行する『伊勢郷土史草』にも度々原稿を寄せていただきました。
 また、平成22年度(2010)から25年度(2013)にかけて三重県教育委員会の要請で南伊勢地域における伊勢市関係の石造遺物の調査が行われ、伊勢郷土会も協力し、氏は、中心的にかかわり、私たちを指導し終了させ、成果は、冊子『三重県の石造物調査報告Ⅱ~南伊勢地域~(2013)』の中にまとめられた。
 氏の伊勢郷土会への参画については、谷口永三先生も『宇治山田覚書』の中で「発会後、程なく会の運営、活動の記録が要望され、この方面の適任者として市役所の職員であり文化財方面にも精通する濱口主一を迎えることとなった。この人は、間宮(当時の間宮忠夫会長)とは師弟関係もあり、適切な人選、郷土会が今日に至る実質的な基礎を造り得たのは、この会にとって実に恵まれたことであった。」と伊勢郷土会に欠かせない存在として高い信頼を寄せていた一端がうかがい知れます。他に伊勢市生涯学習センターでの「ふるさとの石造遺物」や「ふるさとの野仏を訪ねて」などの講座や、伊勢図書館での現地学習会などにも参画され、真摯な姿勢で講話をしている姿が印象的でありました。
 私事ではありますが、私が、伊勢市役所観光商工課に配属された昭和38年(1963)から60数年、伊勢のまちづくりの在り方、仕事への姿勢を学んだ職場の先輩であり、上司でもあり、これまで数々の恩恵を受けてきた方でもあります。

(阿形次基・NPO旧御師丸岡宗大夫邸保存再生会議会長 伊勢郷土会会長)