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 御杖温泉 姫石の湯

コペンが我が家にやってきて間もない頃、曽爾高原に薄を見に出かけたことがあった。途中に立ち寄った道の駅で昼食を食べたのだけれど、用意してなかったので、できたばかりの温泉には入らずに出てきてしまった。ところが、この間行った飯高の温泉が思いがけず快適だったので、せっかく立ち寄りながら未体験の温泉が気になっていた。まだ、遠くに行くほど体力に自信がない。近場でGW気分を堪能するには日帰り温泉くらいが適当だろう。

そう思って、朝から三重の道の駅を検索したのだが、どうもそれらしい温泉が見つからない。倶留尊山の近くには「道の駅美杉」というのがあるが、温泉のことは書いてない。狐につままれた気分だ。ままよ、道に迷うのはいつものことだ。一度は行っているのだから、行けば道を思い出すにちがいない。温泉グッズを用意して車に乗り込んだ。

さすがに暑い。白の半袖Tシャツの上にインディアンマドラスのシャツを羽織った。気分はもう夏である。勢和村を通る国道386号線は、途中で仁柿峠という峠道を経由する。狭い林道で、対向もままならない。この前通ったとき、妻の冷たい視線を浴びた道だ。
「あなたが運転するのなら、どうぞ。」と、キーを渡された。峠道を迂回するとかなり大回りになる。それに、幹線道路は連休で混んでいる。迷わずにキーを握った。

仁柿峠が近づくと、幅員減少を知らせる標識が何度も出てくる。大型車通行不能、車長9メートル以上の車通行不能、としつこいくらいだ。そこはコペン、車の大きさには何の心配もない。しかし、3桁国道の峠道にしては、仁柿峠けっこう交通量が多い。九十九折りの急な峠道で、対向車の確認はカーブミラーが頼り。ドライブを楽しむというより、少しでも広いところはないかを探しながら、ひやひやの対向を何度か繰り返した後、やっと峠を越えた。

道の駅美杉はすぐに見つかった。しかし、記憶にある道の駅ではない。
「この近くに道の駅で温泉のあるところ知りませんか?」と、妻が店の人に訊いている。
「ああ、それなら姫石(ひめし)の湯のことやろ。奈良県側にある御杖温泉やなあ。」
な、奈良県!そうか、御杖は奈良県だったか。おまけにどうやら道の駅ではないらしい。それではどれだけ探しても見つからないはずだ。我ながら相変わらずそそっかしい。

すぐ近くに桜の名所百選にも選ばれている三多気の桜があった。この春も行こう行こうと思いながら、人出の多さに恐れをなして見送ったのだった。季節外れで誰もいない葉桜の並木はそれはそれで見事なものだが、オープン・カーで通る道ではない。毛虫が落ちてこないかひやひやし通しだった。姫石の湯まで3分という道標を見つけ、本線に戻った。

御杖温泉は奈良県に入るとすぐに見つかった。相変わらずの賑わいぶりで、食堂は満席。お気に入りの焼き鯖寿司を買って、休憩所で食べることにした。ところが、湯上がりの仮眠を楽しむ人が座卓の周りを占領していて、席は空いているのに座ることができない。どうにか、片側だけ空いているところを見つけて食べることができた。昼寝をするのは勝手だが、何もわざわざ座卓のあるところで寝なくとも、他に場所は空いている。いい年をした大人のこうした所業を見るのはかなしい。

姫石の湯はアルカリ性単純温泉。さらりとした湯だが、肌を撫でるとすべすべとした感じがある。男女同権ということか、木の浴槽と岩風呂が日替わりで男女に供される。今日の男湯は木の方。新しいので、清潔で気持ちがいい。まずは大浴槽でゆっくり手足を伸ばした。外は快晴。すぐに露天風呂に入りたくなった。石造りの浴槽の他に一人用があるのは、近頃の流行りらしい。ここのは木樽。首まで浸かると、湯が外に溢れるのは豪勢でけっこう癖になる。サウナも楽しみ、髪も洗って外に出た。

妻は、ゆっくり入っているので、しばらく待った。出てきたところでソフトクリームを食べた。湯上がりの体を冷ますのに別棟の街道市場をひやかした。翠泉窯の奥野敏春という人が焼いた大振りの酒器が、備前風の肌理の粗さといい、先細りの形といい、好みだったので土産に買った。焼酎用のサーバーとして使おうと考えている。海に遊びに来た子が貝殻を見つけるのと同じで、お気に入りの物を見つけた日はうれしいものだ。

我が家に帰り、シャツを脱ぐと、腕時計をしていた部分だけ白く灼け残り、まくり上げた袖から下の部分が真っ赤に灼けていた。日に灼けた腕を見ていると、健康さを取り戻したようで何やら安堵を覚えたのだった。

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