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アルファ・ロメオ特製ポロ

 2006/10/14 スパイダー

朝刊にめずらしくアルファロメオの広告がでかでかと出ていた。いよいよスパイダーが発売されたらしい。スパイダーと言っても蜘蛛ではない。スピードが語源がそうだ。アルファロメオのオープン2シーターの愛称である。もう1台オープン・カーがほしいわけではないが、スパイダーの新車ともなれば一度はシートに座ってみたい。仕事から帰ると、夕刊と一緒にディーラーからの招待状もとどいていた。

休日のはずだったが、土曜日はちょっと顔を出さねばならないところがあった。出先まで、妻に迎えに来てもらって、二人で出かけた。早目にとった昼食のせいか、鈴鹿を過ぎたあたりで眠気が襲ってきた。近くのホームセンターに車を止めて、軽く体操をすると、何とか眠気はおさまった。国道から降りる道をまちがえて一本早く降りてしまった。いつも、最短距離で着いたことがない。

駐車場に車を止めていると、
「おや、どうしたんですか今日は。二人ともめかしこんで。」
と、言いながらK氏が顔を出した。そう言えば出先からそのままやってきたので、濃紺のスーツ姿だった。いつもはカジュアルな恰好をしているが、これでも勤め人である。そんなに驚かなくてもいい。口の中で言い訳めいた文句をつぶやきながら店の中に入った。

ショー・ルームには一段高い台座の上に新車の黒いスパイダーが、フロアには歴代のスパイダーが展示されていた。ミュージアムめいた、ちょっと洒落た演出である。聞くところによると一番古いタイプのスパイダーは、修理を担当するスタッフがオーナーだとか。映画「卒業」で、ダスティン・ホフマンが乗ったあのデュエットだ。鋭く剔られたサイドと、リアの長いデッキが、スピード感を強調するピニン・ファリーナのデザインである。

いくら格好がよくてもこういう古い車は、実際に使用するにはかなり覚悟がいる。大幅なメンテナンスが必要だし、いつ止まってしまうかも知れないリスクがつきまとう。もっとも、オーナーがアルファ・ロメオのスタッフなら、その心配はかなり軽減される。ちょっと羨ましい。シートに座ると、その低さに驚かされる。ステアリングを握ると、カー・ラジオから「ミセス・ロビンソン」が聞こえてきそうだった。

新型のスパイダーだが、一口に言うと、ブレラのオープンタイプ。フロントフェイスはブレラそのもの。
「本社のトップはよほどこの顔が気に入って入るんでしょうねえ。」とK氏。
リアはピニン・ファリーナの手が入ってフェンダー部分が盛り上がる官能的な仕上げになっている。少しつまんだといった感じのダックテールと相俟って、このあたりは完全なイタリアン・テイストだ。フロントの厳めしい顔つきとリアの官能的な表現がうまくマッチしているとは言い難い。どちらかと言えばリアの方が好みだ。ブレラ譲りの角形のマフラーはいただけないが。

K氏が、「この前聞いてたあれ、ちょっと見させてください。」というので、キイを渡した。少し前からナビのあたりでハム音がする。長く乗っていると、その音が耳につくようになってきた。自分でも思うのだが、異音に人一倍神経質らしい。ながら族ではないので、つねに音楽を聴いていないから、よけいにそうなのかもしれない。「サウンド・オブ・サイレンス」が好きなのだ。

「試乗はできないの?」と訊くと、K氏にやりと笑って、
「うちなんかにそんな車はありませんよ。」
招待状には試乗の方には、アルファ・ロメオ特製ポロシャツを贈呈とあったのに、と思いながら、そう書いてあった封筒を渡すと、奧の方で何やらごそごそしている様子。しばらくすると、白いビニールバッグを持って現れた。どうやら、催促をしないとくれないらしい。

「サイズは?」と訊くと「Mです。」とK氏。
「小さくない?」と、わたし。「大きめですよ。」というK氏。そうこうするうちにデュエットのオーナーが手に取り外したナビを持って現れた。メーカーに送って調べてもらうので、しばらくかかるという。車本体ではないのでそうするより仕方がない。ナビの部分が「ほがら」というのはみっともないが、それまで代車というわけにもいかない。できるだけ早くとお願いして店を出た。

出かける前には湯の山温泉に行くことも考えたのだったが、なんとなく億劫でやめておくことにした。妻は町に出て、夫の服を見てみたい様子だったが、特に今必要でもないので、またにした。何年も前の服をいまだに着ているので、さすがに色褪せてきているのだが、破れてもいないものをなかなか棄てられない。そんなわけで、新しい服を買う機会がない。

修理の人が気を利かせて、もともとあったオーディオを復活させてくれたので、CDやラジオは聞くことができる。それよりも、ナビをつけたことで死んでいたオーディオに、ほかのライトと同じ深紅の光がついたのが感動的だった。ナビがなければ、車内の光は全部この赤系統で統一される。いっそ、外してしまおうかと思うくらいのものだ。

家に帰ってから、さっそくポロシャツに袖を通してみた。何が大きめなものか、ぴったりサイズである。
「洗って縮んだら私が着てあげる。」と、笑いながら妻が言った。
左胸の部分にAlfa Romeoの刺繍、襟の合わせ目の部分が例の楯形グリルの形になっている。
いっそ着ないで、このままとっておくか、という気になっている。

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