HOME | INFO | LIBRARY | JOURNEY | NIKE | WEEKEND | UPDATE | BBS | BLOG | LINK
WEEKEND / garage 147
Home > Weekend garage147 > 16
garage147
AlfaBreraのロゴ入りペーパーナイフ

 2006/4/9 BRERA

ついにブレラが発売された。2002年のジュネーブ・モーターショーで発表されるや絶賛され、数々の賞を受けたコンセプトカーである。ジウジアーロによる三連のヘッドライトを擁した独特のフロントマスクはブレラ顔と評され、最近のアルファロメオを代表するスタイルになっている。リフトアップ後の147も、その系統を継いでいる。新聞に広告が出たその日、家に帰るとディーラーから封筒がとどいていた。発表会への招待状だった。

翌日、K氏に電話して、本当にブレラがあるのか訊いてみた。
「なくてどうするんですか。一度見たら、147を下取りにしてと、言い出しますよ。」
そう言われると、どうでも見たくなる。ブレラは展示だけだそうだが、これも発売されたばかりの159なら試乗車があるという。プレゼントのペーパーナイフも魅力的だ。四日市まで走ってみることにした。

家を出たときは晴れていたのに、津で雨に降られた。雨はすぐにやんだが、四日市に近づくと遠くの景色がぼんやりと煙って見えだした。妻は工場の煙か、と疑っているが公害で騒がれたのはずっと昔のことだ。まさか花粉でもあるまいと話しながら市街地に入った。ところが、ナビに従って左折した道は、店を通り越してしまう。気がついたときには遅かった。立体交差に弱いのがナビの泣きどころだ。上の道と下の道をまちがえているらしい。工事現場の凸凹道まで案内されたが、そこで行き止まり。試乗で走った道だから見当はついていた。ナビなしに無事アルファロメオ四日市に到着した。

ブレラはショールームの中にあった。さっそくシートに座ってみる。あれっ、頭がつかえる。シート高を最低にしても普通のドライビングポジションにすると、ヘッドクリアランスがほとんどない。身長173センチである。シートを後ろに下げると、余裕ができるが、ステアリングを握った腕が伸びきってしまう。ラテン系のイタリア人はアングロサクソンとちがってさほど背は高くないが、腕か脚が長いのかもしれない。

シルバーを基調にしたセンターコンソールは、すべての計器類がドライバーの方を向くように配置され、まさにコックピットの雰囲気。しかし、ステアリングの形状は平板で、あまり高まりを感じさせない。シートの色が黒っぽいからよけいに冷たく感じるのかもしれない。赤や茶系統とのコンビネーションが設定されているから、そちらを選ぶと映えるかもしれないと思った。

外見は147を平べったくして引き伸ばした感じと言ったらいいだろう。特に下向きの五角形をしたリアウインドウや、ルーフスポイラーは、よく似ている。フロントは159そっくり、というより、147や159がブレラの影響を受けているのだ。2002年には鮮烈なイメージだったものが、その後発売された車に取り入れられたことで、かえってコンセプトカーならではの先進性が失われてしまったのは皮肉である。リアシートの狭さや後方視界の悪さなど、実用的な点では使い勝手は悪そうだが、コンセプト・カーとしてのイメージには価値がある。147を下取りにする気はおきなかったが……。

せっかくなので159に試乗させてもらった。左ハンドルのマニュアルということで、少し心配したが、エンストもなくスムーズに走り出した。ハンドルの切れのよいのには驚いた。乗り心地は上質にして高級感がある。十の位が一つちがうとこうもちがうか、というのが正直な感想。見た目は少し大きいかなというくらいだが、147が小舟に感じられるくらいの乗り心地。エンジン音は静かだし、足回りもソフトである。K氏によれば、長距離を乗ると違いが分かるということだが、試乗でもそれは充分感じられた。

店内には他に147GTAや漆黒のSPORTIVAが並べられ、ラインナップが豊かになった。GTAの黒とタンレザーを合わせた内装は、ステッチを効かせたシートとも相まって、いかにも男の子の喜びそうなやんちゃなイメージに溢れていて好感が持てた。ヘッドライトやグリルの形状がモデルごとに少しずつ異なっているのが、こうして並べられるとよく分かる。あの時は147もTIしか目に入らなかったが、これだけ並んでいたら、もっと迷ったにちがいない。5000qを越えていたので、オイルも交換してもらって店をあとにした。助手席にプレゼントのペーパーナイフとブレラのプロモーションDVDが乗っていた。

帰りに湯の山温泉まで足を伸ばした。ラジオによれば、この日四日市が煙っていたのは黄砂のせいらしい。川沿いに咲く満開の桜の下では多くの人が花見の宴を繰り広げていたが、弁当の折り詰めの中にも黄砂が降っているのだろうと思うと気の毒になった。山道にはいると、道の両脇に植えられた桜と芽吹き始めた木々の新緑がリズミカルに入り混じり、山里ならではの光景が愉しく美しい。

土曜日だというのに絵野温泉はすいていた。山の上の露天風呂からはさぞ桜がよく見えることだろうと思って来たのだが、まだ五分咲きというところで見頃には少し早過ぎた。それよりもV字谷の向こうに見えるはずのせっかくの眺めが黄砂に覆われて何も見えないのではしようがない。そのかわり、湯舟もスチームバスも独占して、ゆっくりつかれたのが何よりだった。

帰りはナビの誘導で306号経由で津まで帰ってきた。奇しくも前回湯の山温泉から帰った道と同じであった。あの夜はナビもなし、雨も降る中で、何度車を止めて地図と首っ引きで道を探したことか。それにしてもよくこんな分かりづらい道を迷わずに帰ってこられたものだ、と人間ナビの正確さにあらためて感動を覚えた。これでなかなか人間も捨てたものではない。


< prev pagetop next >
Copyright©2006.Abraxas.All rights reserved.since 2000.9.10