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garage147
天平倶楽部

 2006/3/12 奈良・月ヶ瀬

近頃、こまめに天気予報を見るようになった。土曜日と日曜日、どちらの日にドライブするか、予定が立てやすいからだ。今週末は土曜日が晴れ、日曜日は雨になるという予報だった。
土曜日の朝目を覚ますと、寝室の小窓には明るい青空が映っていた。しかも、暖かい。どこかに出かけなくてはもったいないような天気ではないか。

車を走らせたい、という気持ちが先に立つので、行き先は後から考えることになる。この前は海だから今度は山か、という程度でいつも走り出すのだ。近くの神社では枝垂れ梅が見頃だそうだが、いつぞや行った月ヶ瀬の梅はどうだろうか。奈良に行くと必ず立ち寄る店があるのだが、ここのところしばらくご無沙汰している。久しぶりにあの店の料理が食べてみたくなった。

奈良まで走るとなると、高速を亀山で下りて関から名阪国道といういつもの道だ。通勤時の渋滞でたまっているストレスを発散させるには高速道はもってこいである。147のスピードメーターは垂直指針で、停止時は真下を指している。速度を示す目盛りは3時の位置に240qまで記されているが、ふだんは半分も回ったことがない。たまには走らせてやらないと、車にもよくない。とか言って、ほんとは自分が走りたいのだ。

本当にいい天気で、視界良好、横風もなし。そのせいか、どの車もいつもより速度を上げていた。アクセルはほとんど踏み込んでいない状態で普通に走っているだけなのに、速度がどんどん上がっていく。少し前の国産車のように、5速をオーバードライブと考えていると、とんでもない。5速にすると回転数が一定のところで安定したりせず、そのままどこまでも上がっていく。タコメーターの回転を示す赤い針が4000回転から5000回転にスーッと回っていくと、さすがに心配になってくる。

そういえば、いつもは後ろから走ってくる車のために車線を譲ることがけっこうあるのに、今日は車の数も少ないけど、さっきから一度も抜かれていない。タイヤはしっかり路面をホールドしているし、ステアリングの感覚も安定している。有名なエンジン音も4000回転をこえてもいたって静かで、スピードが出ていることに気づかない。速度計の指針は真上を指していた。

車の性能を本気で試すには公道では無理。まだまだ余裕のあるのが分かった時点で走行車線に戻った。なるほど、レース場で走行会をしたくなる気持ちが少し分かってきた。しばらく走ると、覆面パトカーに捕まっている車を見かけた。何喰わぬ顔で通り過ぎながら、くわばら、くわばらとつぶやいた。その後、名阪国道でももう一件遭遇した。お巡りさんも人の子。こんな上天気には走りたくなるんだろうなあと、妻と話した。

針テラスで休憩をとって走り出すと、ナビが福住で下りるよう指示を出した。この先6キロのところで渋滞というから、神戸の轍を踏むまいと一応下りた。1キロも行かないところで工事中につき通行止めの看板に出くわした。まさか、と思いながら進んでいくと、泥だらけの道は工事車両で完全に塞がれていた。VICS情報でナビにも工事中の箇所を標示するので安心していたが、大きい道でないといちいち標示しないのだろうか。もと来た道を引っ返して名阪国道に戻った。

天理から奈良への道はいつものように渋滞していた。観光都市にアクセスする道路にしては貧弱である。奈良公園に入ると柳の新芽が目に飛びこんできた。桜のつぼみはまだ堅く、若草山も枯れ草の色を纏っていた。そのまま転害門近くにある天平倶楽部に向かう。弁当程度の軽い膳でも、手を抜かない、この店の料理がことのほか気に入っている。この日の注文は芋粥御膳。ままごとのように小さな小鉢が六つ、胡麻豆腐に揚げだし、海老、帆立、煮物、鰆、だし巻き卵等が、仕切の入った箱に行儀よく並んでいる。それとは別に銅製の鍋に入った芋粥に大ぶりの梅干しと香の物がついている。芋粥と言っても芥川の書いた自然薯のそれとはちがう。お粥の中に薩摩芋の入ったものだ。

ゆっくりと食事を堪能した後、四天王像で有名な近くの戒壇院を訪ねた。余談だが、サッカー部時代の先輩の一人が広目天の顔にそっくりなのだ。ちょうど、お水取りの期間で交通規制も布かれていると、店のパンフレットに書いてある。すぐ近くなので、歩いていくことにした。細い道を入ると、そこがもう東大寺境内。戒壇院は小高い丘の上にあった。修学旅行以来なのだが、なんだか前と様子が変わったような気がする。妻もそう言うし、他の観光客も似たような感想を洩らしていた。以前は、もっと近くで四天王が拝めたような気がするのだが。

戒壇院から二月堂に向かう道で、鹿に会えた。せっかく寄ってきてもこの辺では煎餅も売ってないし、持ち合わせもなくてかわいそうだった。その向こうに見事な紅梅が咲いていた。毎年写真を取りに来るのだという老夫婦が、スライドの枠片手に構図を考えていた。折からの日和に誘われてか、画架を立てて絵筆を握る日曜画家もちらほら見える。こんな大きな公園が市中にある奈良の人がうらやましくなった。「年をとったら奈良に住むのもいいね。」と、そばにいた妻がつぶやいた。

お水取りのために真新しい竹矢来で身支度した二月堂を見て、車に戻った。帰りの道はすいていた。天理から名阪に乗って、小倉というところで下りた。月ヶ瀬に寄っていこうと思ったのだ。月ヶ瀬までの道が凄かった。農免道路らしいが、ジェットコースター並みの上り下りでしかも長い直線である。梅の時期以外なら走りたい放題だと思った。

少し早すぎたかと思ったが、相変わらず梅林近くの道は混雑していた。そのまま素通りして月ヶ瀬温泉に向かう。近くまで来たら看板を見つけたのだ。今日は特に用意もないが、入るならタオルを買えばいい。梅祭りのシーズン中の土曜日。ロビーは混んでいるようだったが、入れるというので一人600円を払った。タオルはついていた。大浴場にサウナ、冷泉25度の源泉に岩風呂風の露天風呂と、一般的な作りだった。女湯の露天には紅梅が咲いていて、その香りに包まれて入れたと妻は喜んでいた。
男湯の露天は、うたせ湯が岩を組んだ上の方から滝のように流れ落ちていた。これといって特徴のない湯だったが、露天風呂は開放的で気持ちよかった。

往きに見た標識に、午後3時には紀勢道が一部開通すると書いてあった。時計は午後5時を回っていたが、開通した日に通りかかったのも何かの縁と、行けるところまで走ってみることにした。往きはインターチェンジであった場所が、帰りはジャンクションに変わっていることに少し感動した。何よりもナビがそれに対応していることに驚いた。道なき道を走らずにすんだからだ。15キロほどで高速道路を下りていつもの道を帰ってきた。片側一車線の対面高速ではスピードも出せない。500円の通行料金を払っても走りたい客が何人いるかで、尾鷲までの道ができる期間がちがってくる。大台町まで高速が通じたので、宮川村の小屋に行くのは格段に早くなった。花粉症でさえなければ、さっそく通いたいところなのだが、うらめしい話である。

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