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アルファロメオ147のエンジン

 2005/12/25 帰還

「クリスマス・イブには〜」という歌詞があったような記憶がある。誰の歌だったかは忘れたけど。
歌のとおり、24日の午後9時、真っ赤なボディのアルファが我が家に帰ってきた。二、三日前に「土曜日の夜くらいには」と電話では言ってたけど、その後に「天候しだいで」という言葉がくっついていた。四日市はこちらとちがい、よく雪が降っているようだ。

電話の様子では、やはりエンジンがかからない理由は特定できなかったということだった。寒い日が何度もあったが、同じ状態は再現できなかったようで、困っている顔が浮かぶような口調だ。そのかわりと言っては何だが、異音の方は原因が突きとめられたとのこと。まあ、それだけでも入院させたかいがあったと考えるしかない。

「今からうかがってもいいですか?」
と、再び電話がかかってきたのが土曜日の午後7時頃。
「近くまで来てるんですか。」と訊くと、
「いいえ。これから出るところです。9時くらいになるかもしれません。」
「家にいますから構いませんが、それにしてもクリスマスイブなのに悪いですね。」
「いえいえ。ケーキくらいいただければ。」と、返す。この調子の良さが嫌いではない。

クリスマス・ディナーは鶏肉のバスク風煮込み。軽くシャンパンで乾杯してからワインに切り替えた。デザートは行きつけのケーキ屋で買ったタルトレットだったが、しばらく行ってないうちに味がすっかり落ちていた。洋酒を効かせた大人っぽいしっとりとした口当たりが好きだったのに、どこにでもあるお子様風の味になっていた。パティシエが変わったのか、この店もこれで終わりだな、と思った。

それにしても遅いな、と時計を見上げたらドア・チャイムが鳴った。プントのキーを持って、外に出た。いつもダークスーツできめているK氏だが、この寒さには勝てないらしい。ハーフコートを羽織っている。
駐車場の前に147が止まっていた。K氏はリアゲートを開け、説明しだした。
「結局、部品を三つ換えました。内張の中のプラスティック部品の一部が外れていたのが一つ。それからショックと、ロックの金具です。それだけ換えたら音がしなくなりました。エンジンの方もテスタで調べましたが異常ありません。ブレーキの件ですが、かからないときはもう一度強く踏んでください。それで大丈夫だと思います。」

駐車場に147を入れ、K氏はキーを手渡しながら、リアシートにある白い包みを指し、
「アルファのカレンダーです。」と、言った。
「手間をとらせました。遅くなりましたが、メリー・クリスマス。ケーキはありませんが。」
と、言いながらこちらもプントのキーを渡した。そうしているところへ、妻もやってきた。車に乗りかけていたK氏は、また一度下りて、妻に挨拶をすると帰っていった。

原因不明のエンジン・トラブルだが実は一つ思い出したことがある。あの日は特に寒く、ふだんは滅多に履かないかかとのあるブーツを履いていたのだった。いつもはウォーキングシューズだ。靴底の厚さや材質のちがいで、ブレーキを強く踏んでいるつもりが、ふだんほどは踏んでいなかったということも考えられる。もし、そうだとしたら、この大騒ぎは何だということになるが、靴を履き替えて試したわけではないので何とも言えない。

とにかく、この騒ぎのおかげで気になっていた異音の原因が突きとめられ、部品も交換してもらった。嘘から出たまことというか、ディーラーの対応も誠意のあるものだったし、終わりよければすべてよしというのは、こういうことを言うのかもしれない。帰りかけて、カレンダーを忘れたのに気がついた。後部座席から白い包みを出し、ドアをロックした。テールランプが二度瞬いた。
「ただいま」と言っているように見えた。

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