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garage147

 2005/12/19 トラブル発生

1.異音

リアゲートあたりから何かが転がるような小さな音がするのに気づいたのは納車後間もなくのことだった。すぐにK氏に電話をしたのは言うまでもない。K氏の自宅のある町は近頃合併して同じ市民になったばかりだ。仕事の帰りに寄りますというので待つことにした。

夕食後に顔を出したK氏を助手席に乗せ、少し走るとK氏は言った。
「なるほど。これは気になりますね。」
後ろに回り、リアゲートを開けると
「これで少し走ってみてください。」とK氏。
座席に戻ったK氏を乗せ、車を出した。百メートルほど走ったが、音は聞こえなくなった。原因はどうやらリアゲートにあるらしい。しかし、今すぐには何もできないので、修理工場に入院させることにした。

代車のフィアット・プントに乗って二日ばかりした頃電話があった。結局原因は不明のままだが、リアゲートの内装をはずしてつけ直したことで、音は格段に小さくなっ た。これで我慢してくださいということである。たしかに気にしなければ忘れていられる程度に改善されていたので、それでよしということにした。工場まで 持っていって何もできなかったのだ。日本では分からないということだろう。

その後しばらくは忘れていたのだが、岐阜に行った頃から、時折何かの拍子で例の音がするようになった。ずっと鳴っているなら、また電話もできるのだが、全然音のしない日もある。気まぐれなのだ。皮肉なもので担当者を呼ぶと、その時は音がしなかったりすることは前の車でもあった。こちらが神経質すぎるのだ、 と言われかねないので、そうそう電話もできない。

速度が上がり、エンジン音が大きくなると、それにかき消される程度の音なので気にしなければいいようなものだが、性格だろう。気になるものは仕方がない。車が帰った日、
「会社まで走っていく間、音はしたでしょう。気になりませんでしたか?」
と、聞いた。K氏は少しも間を置かずにあっさりと答えた。
「ラジオを聞いて、ごまかしました。」
イタリア車とつき合うには、こういう神経がいるのだろう。きっと。

2.エンジンがかからない

12月としては記録的な大雪が列島を襲っている。たしかに寒さは厳しいものの、太平洋側に面したこの町では、雪もほんの少し降っただけで、今朝もからりと晴れていた。いつものように駐車場に停めてある147のドアを開け、ダークグレイの本革シートに腰を下ろした。助手席に鞄を置き、おもむろにキーを回した。かからない。元の位置に戻してもう一度。やはり、かからない。エンジンをかける時のキュルキュルという音もなく、何度回してもイグニッションキーからは何の反応も返ってこない。

あわてた。勤務時間に間に合わなくなる。マニュアルを開いても、こうした事態についての説明はない。一日走らなかっただけでバッテリーが上がるはずもないが、とりあえずボンネットを開けてみる。バッテリーの充電状態に異常のないことを示すグリーンのランプが点灯している。ボンネットを閉めて、もう一度かけ直す。今度も、エンジンはウンともスーとも言わない。いよいよ来たか、と思った。

購入以来一か月、リアの異音をのぞいて、トラブルらしいトラブルがなかったから安心していた。しかし、今回のトラブルはちょっと困った。出勤前で、ゆっくり点検している暇はない。まずは勤務先に電話をかけて、少々遅れると告げた。電話の向こうで同僚の笑う顔が見えるようだ。アルファが来て以来少しはしゃぎすぎたのを反省した。とはいえ、今はとにかくどうやって出勤するかだ。

家に帰ったら妻はもう出勤したあとだった。駐車場近くにあるバス停で時刻を調べるが、出たばかりで次は30分後にしか来ない。あとは電車しかない。記録的な寒さの中、革の上下を着込んではいるが、車で出勤するための軽装で、徒歩で十分ほどの私鉄の駅まで歩きはじめた。空気は凍てつき、駅に向かう下り坂には、凍結防止剤が撒かれている。寒さが余計身にしみた。

幸い電車はすぐに来て、職場にほど近い駅まで行くことはできた。あいにくタクシーが見あたらず、職場に電話をしたら迎えに行ってやるとのあたたかい言葉。駅前の閑散とした広場で待っている間にディーラーに電話した。まだ来ていないと思っていたK氏が出たので、エンジンのかからないことを言うと、ライトは点くか、と訊く。まだ家にいると思っているらしい。とにかく、一度見てくれと言っているところに迎えの車が来た。

こんな時でも、焦らないというか妙に落ち着いているのが外車のディーラーなんだろうか。ご迷惑をかけますの一言もない。何とかしてみます、というのがやっとの返答だった。職場に戻って仕事についてしばらくしたら電話がかかってきた。今の状態から考えられるのは、ブレーキのスウィッチが、今朝の寒さで凍りついたのではないかということだった。ブレーキを踏んでないとエンジンがかからないのは安全のためだろうが、寒さでエンジンがかからないというのでは困る。たしかに動かなければ事故はないだろうが。

キャリアカーで行くから一度車を預かりたい、というのが向こうの言い分である。最悪の場合は部品を交換するという。しかし、家に誰もいない日なので車はロックして、キーはこちらに持ってきている。家に行く前、職場に寄ってもらうことにした。

昼過ぎ、K氏が顔を見せた。どんな時も同じ微笑を浮かべている。営業としてはなかなかのものだと思うが、こういうときはちょっと癪にさわる。代車はいつものフィアット・プント。キーを交換して家に急いでもらう。ついでに、例の異音がまた出たこともつけ加える。見ておきますとのことだった。あまり期待せずに待つことにする。

夕方、携帯に電話がかかった。K氏からで、行ってみるとエンジンはかかったとのことだった。それほど気温が上がったとも思えないが、朝方よりは高くなっているから、溶けたのかもしれない。一応様子を見るために四日市に持っていくというので、そうしてもらった。今日は、かかったとしても、また凍りついても困る。この寒波はしばらく続くだろう。気象庁も暖冬予報を修正したばかりだ。

それにしても、いくら記録的な寒さとはいえ、真冬ともなればこれくらいの寒さは何度でもあるだろう。その度凍りつかれたのではどうしようもない。イタリアだって北にはアルプスがひかえている。たしかに車庫はないが、映画で見るヨーロッパの車だって、いくらも露天で駐車している。寒さが原因とは言えないだろう。少なくない147オーナーが愛車を小悪魔と喩えていたのを思い出した。寒さに負けて昨日一日乗ってやらなかったのがいけなかったのか、と本気で後悔した。

プントに乗って帰る道もそうだが、家に帰ってきてからも、駐車場に147がないのがどうにも寂しい。トラブルはあっても、一度あの車に乗ってしまうと、他の車に乗る気がしない。どこがそんなにいいかは、また車が帰ってきたらゆっくり書くことにしよう。今は一日も早く帰ってくるのを待つばかりだ。

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