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garage147

 試乗まで

サービスアドバイザーの肩書きを持つN氏は、いっこうに売り込む様子がない。
「ロメオのお客様は、はじめから決めてますからね。いつでも遊びに来てください。」
N氏はアルファじゃなくてロメオと呼ぶのだ。購入を決めるまで何度となく足を運ぶ客が多いらしい。そりゃそうだろう。なかなか一度や二度で決められるものではない。この日は、パンフレットだけもらって帰ってきた。なぜか総合カタログの147は、フェイスリフト前の写真が掲載されていた。

147はヨーロッパ車でいうところのCセグメントに属する。このクラスにはVWゴルフやプジョー306がいる。BMW、アウディも、このクラスの車を手がけている。ハッチバックスタイルのコンパクトなボディに2000CCのエンジンを積んで、きびきび走るホットハッチは、細い石畳の坂道が多い欧州では需要が多い。日本ではハッチバックは今ひとつ人気がないようだが、個人的には好きなかたちだ。

実は今までいわゆる4ドアセダンに乗ったことがない。最初が日本では人気のなかった二代目のセリカクーペ1600。次が同じセリカのリフトバック。その次がカペラ5ドアセダンで、これも欧州向けが70パーセントという、日本ではあまり見かけない車だった。ドイツで見かけたときはうれしくて記念写真を撮ったくらいだ。その次が今のレガシィワゴンだから、後ろにトランクのついた車は乗ったことがない。

本気で購入を検討しはじめると、ライヴァル車が気になりだした。そうはいっても、スタイル重視。フロントフェイスが気に入らなければ、どんなに評価が高くても対象外になる。かろうじて残ったのがプジョ−と、スマート・フォーフォーだった。プジョーの方は隣町、スマートは自宅近くに営業所があった。
まず、試乗したのがスマート。1300CCのフォーフォーは、ミッションが147と同じシーケンシャルというのでそれも気になっていた。結果的には足回りが軟らかすぎて踏ん張りがきかないので却下。

プジョーの方は、営業担当がつなぎを着て応対する姿勢が気に入った。やはり、車が分からない人には安心して担当を任せられないからだ。しかし、この日は試乗ができないというので、試乗できる日が決まったら電話をもらう約束だけして帰ってきた。306の電動でトップが開閉するCC(クーペキャブリオレ)には、感動したが、いくら4シーターとは言え、コペンを持っていて、もう一台キャブリオレ、というのは現実的ではない。妻にコペンを勧めたのが少し悔やまれたが、後の祭りだ。

そのプジョーのディーラーから連絡が入ったのが二週間ばかり経った金曜の午後。土曜の午後なら試乗ができるという。あの後、オータムフェアとかの葉書が届いたので、再度アルファの店を訪ねている。試しに見積もりを出してもらったりしたことで気持ちはフランスよりイタリアに傾いているのだが、相手は車、まず乗ってみないことにははじまらない。乗り心地がよければ、アルファに傾いている気持ちが揺らぐかもしれない。

そんな思いで訪れた青い獅 子の店だったが、正直言って期待はずれだった。試乗したのはプジョー206style。もっときびきびした走りをイメージしていたのだが、思ったよりソフトで、町のお買い物車という感じだった。そういう用途にはこのコンパクトサイズはいかにもぴったりだろうが、レガシィから乗り換えるには少々役不足である。クーペカブリオレやワゴンというラインナップの多彩さに興味はあるのだが、今回はパス。スマート・フォーフォーに次いで候補から除外することにした。一つ言っておきたいのは試乗車を出し惜しみするな、ということ。二社とも、もっといいクラスの車が出てきたら印象は変わっていたかも知れない。

いよいよ、アルファ147しかないかと思うのだが、この車だけ試乗していない。この前行ったディーラーでは試乗をやっていなかった。スマートにしてもプジョーにしてもネットの試乗記では、それなりに評価されていたヨーロッパ車が、いざ乗ってみると思ったより物足りない。アルファロメオという名前だけで決めてしまっていいものかどうか、真剣に悩んでいた。少し遠いが県下にはもう一軒正規ディーラーがある。あたってくだけるつもりで日曜日に四日市まで行ってみることにした。

なぜドイツ車が選択肢にないかと疑問に思う向きもあるだろう。実のところ少し前まで次はアウディと思っていたこともあったのだ。ほとんど決めかけていたところに急に物入りなことがあって、今のレガシィに乗ることになった。水平対向エンジンとフルタイム四輪駆動にこだわるポリシーが気に入っての選択だった。 故障もなくサービスも悪くなかった。これには今でも満足している。

ドイツ車の技術の高さはよく知っているつもりだ。デザインも嫌いではない。ただ、それだけに乗り換える面白さがもう一つない。故障せずよく走る車なら、わざわざ乗り換えることはない。今の車でいいからだ。ドイツ車はいわば優等生である。日本車もそれに追随しようとしているようだ。優等生ばかりがふえても世の中は愉快にならない。そこに個性溢れる連中が混じっているから面白い。

そう思うようになったのはコペンに乗るようになってからかもしれない。遊び心に徹した車作りは、乗る人の心をとらえて放さない。一台の車が人生を変えることもあると言ったのは評論家の徳大寺有恒だった。人生は大げさかとも思うが、日々の生活はたしかに変わる。出不精だった以前の自分はどこに行ったのかと思うくらい、最近はあちこち飛び回っている。もっとも、車のオーナーは妻なので近頃はもっぱら助手席ばかりだ。

人生も半ばを過ぎ、少し先が見えてきた。他に特にやりたいということもない。ならば、今少しでもやりたいと思うことがあればやってみてもいいか、と思うようになった。仕事先と家とを往復するための足代わりではなく、用もないのに走らせてみたくなる車があってもいい。そんなところにあらわれたのが147だ。一目で気に入ったのがそのデザイン。飾っておくだけならすぐにでも買うところだ。しかし、そこは車。乗って走ってみるまでは評価の定めようがない。それだけに是非とも試乗がしたかった。

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