■ 空想と現実の夜明け 2 ■



 嵐のような一夜――まさしくイルカにとっては嵐だった――が明けて、森には二人の人間だけが残った。
イルカは考える。ここでの自分の仕事は、カカシの世話だ。
食事を作って、掃除をして、そして少しずつカカシに今の里の状況を教える事だ。
退屈なときは話し相手にもなる。手合わせ・・・はさすがに無理だろうが。
この状況下で、苦手だ嫌いだとは言っていられない。
避けようのない事なら、少しでもお互いにいいように物事を持っていくことだ。
 ひとつ深呼吸をして、イルカは心を決めた。
そうと決まったら、とりあえず朝ご飯だろう。幸いにもアスマ達が用意してくれた食材はたっぷりとある。

 「カカシ先生、好き嫌いはありますか?」
なにやら難しい顔をして考え事をしているカカシに向かってイルカは訊ねる。
「それ、やめない?」
「・・・・・・・は?何です、カカシ先生」
「だから、それ。その先生ってやつ」
「ええ?だって・・・」
そういえばナルトにつられて自然と「カカシ先生」と呼ぶようになっていたが、14のカカシにとっては、それは見知らぬ未来だ。
「だってもくそもないでしょ。俺は上忍だけど、下忍担当になんかなってない。26の俺なんか知るもんか。俺は俺だよ。この俺が現実だ」
その言葉を聞いてイルカは、はっとする。
 イルカを嫌った26のカカシは、どこにもいないのだ。ここにいるのは、イルカの知らない、そしてイルカを知らない14のカカシだ。
「すみません、でははたけ上忍とお呼びしてよろしいでしょうか?」
「・・・・・・・カカシ・・・」
ぼそっ。
「・・・・・はい?」
「だから、カカシ。カカシって呼んでよ」
一瞬の硬直。カカシって・・・まさか呼び捨てにしろって?だって俺、中忍だし!いくらいま年下だって相手は上忍だし!
おたおたおたおた。
 目に見えて狼狽するイルカを見て、カカシはくすりと笑みを浮かべる。
嫌いなタイプの男だったが、イルカの素直な言動はカカシの心をいくぶん慰めた。
イルカはどことなく四代目を思い出させる。決して似てるわけではない。ただ相手を慈しむような優しさはとても似ていた。
もっとも目の前の男は自分に対して、どうももうひとつ含みがあるようだ。
それも、もしかしたら26だった自分の某かの行動によるものか、と思うとカカシは忌々しさに腹が立った。
「カカシ上忍・・・ではだめですか?」
なんとか自分の中で折り合いのついた呼び方を見つけたイルカは、恐る恐るお伺いをたてる。
「う〜ん・・・。それもなーんかねえ・・・」
「でも、じゃあ、だったら!カカシさんではどうでしょう!!」
勢い余って、ちゃぶ台の湯飲みがひっくり返る。あわあわと、布巾でこぼれたお茶をふき取るイルカに思わずカカシは吹き出した。
「いいねえ、イルカせんせ。アンタほんとにイイよv」
「は・・・はあ?」
「カカシさんで、手を打つよ。これから、そう呼んで?」
「あ、はい。わかりました」
 返事を返しながらも、あっちこっち動き回っててきぱきと仕事をこなしている。
もしかしてちょっとトロいのかな、と失礼な事を考えていたカカシは、少しイルカに対する認識を改めた。
「ところで、ちょっと聞きたいんだけどね」
「何ですか?私でわかる事ならなんでも聞いてください」
二人分の朝食を簡単に作って、ちゃぶ台に並べながらイルカは真剣な顔をカカシに向ける。
「アンタじゃなきゃわかんないよ」
「?・・・はあ・・・」
「つまりさ。アンタはどうも俺の事が苦手らしいけど、それって前の俺のせいなわけ?前の俺ってアンタになんかしたの?」
「っ!」
ガシャン!!
「あ」
手に持っていた茶碗がするりと抜け落ちて、他の食器に体当たりをかました。
「ねえ、割れちゃったよ。イルカせんせ」
「な・・・な、ん・・・・」
真っ赤な顔をして、口をパクパク開閉させているイルカはお世辞にも可愛いとは言えないが、カカシはその、 いかにもなリアクションを満足げに眺めていた。
「そんなの見てたらわかるよ。アンタ俺に対峙するときすっごく気を張ってるって感じだし」
カカシの言葉にイルカは、思い切り脱力する。
「はは・・・ばれてましたか・・・」
「前の俺のことなんか、ホントはどーでもいいんだけど、この事に決着つけとかないとアンタずっとそのままだろうしね」
「ええと、その。俺、いや、私は、つまりカカシ先生が・・・」
「俺でい〜いよ。面倒だし。で?前の俺がなにしたって?」
何をしたわけではない。というか、何もなかったのだカカシとの間には。
ほんの少しの会話と会釈。ただそれだけ。
その、ほんの些細な繋がりの中でカカシがくれた物はといえば、笑わない目と心のこもらない言葉と冷ややかな無視、だった。
目の前で話をしているのに、自分を見ないカカシ。
そんなカカシを前にイルカは極力相手から遠ざかる以外、なにが出来ただろう。それはもちろん、ショックだった。 里の誇りと言われる相手に嫌われているなんて。
だけど、こちらと同じだけの好意を相手に求めるのは元々不可能なのだ。
「つまり、前の俺がアンタを嫌ってたから俺のことが苦手なわけ?」
「まあ、その。嫌いな相手なんか見たくないでしょう、普通。世話係に決まった時はだからちょっと困りました。 いまのカカシさんは色々不安だろうし、そんな状況下で一緒にいる相手が嫌いな奴だったら余計なストレスとか増えるかなって」
でも、俺の何処が嫌いなのか、俺は知らないから自分を変えようがなくて・・・。
イルカはそう言いながら、気持ちが落ち込んでいくのがわかった。
「俺はアンタの事、嫌いじゃな〜いよ」
「・・・・・・・え?・・・ええ!?ほ、本当ですか!?」
「ほんとほんと。だってイルカせんせ、面白いじゃん。まあ、嫌いなタイプなのは間違いないけどさ」
「嫌いなタイプ?なんだ、だったら嫌いなんじゃないですか」
がっくり肩を落とすイルカに、カカシは「だからそうじゃないでショ」と続ける。
「嫌いなタイプと嫌いは違うでしょ。イルカせんせって、真面目で融通がきかなさそうで妙に一本気なとことかあって、 誰にでも優しくて誰にでも親切で誰にでも手を差し伸べるいい先生に見える」
「え・・・そ、そんな・・・」
「すっごくいい子ちゃん、な感じだって言ってんのよ。忍ってのは要するに人殺しの道具だってアンタちゃんとわかってる?」
「・・・・・あ・・・」
イルカはさっと顔色をなくす。
「アンタだって戦場に行ったことくらいあるでしょ?あのひどい有様を見てどう思ったよ。優しくして甘えさせてるだけじゃ、 立派な忍びは育たないよ」
 イルカはじっとカカシの言葉を聞いている。
「俺達の任務に善悪なんか関係ないよ?殺すのは敵の忍だけじゃない。時には民間人にだって手を下す。心構えのない奴らは、 そういうのに耐えられなくなって自滅しちまうんだ。それを教えないのはマズいでしょ。アカデミー教師ってのは、 まずその心構えをたたき込むのが仕事でしょ?」
 カカシの言葉は容赦がない。イルカはあの事件で一度に両親をなくしてから、人の「死」により敏感に、臆病になっていた。 なるだけ遠ざかっていたい、と。ずっと自分はそれから逃げていた。
うまく誤魔化して気づかない振りをして。
「それを知らないままアカデミーを出されたガキ共を、殺してるようなもんでショ。担当上忍もたまったもんじゃないよ思うよ」
ずずっとイルカは鼻をすする。泣く資格なんかあるはずない。
「カカシ先生が・・・・・」
「ん?」
「カカシ先生が、俺を嫌ってたのって・・・・」
「ん〜、まあ、分かんないけどね。ほとんど他人みたいなもんだしさ」
「俺ずっとひどいことしてたんですね。嫌われて当然だ・・・」
「でも、俺は嫌いじゃないよ。言ったでしょ。アンタ面白いって」
「・・・おもしろい・・・・」
「そ。嫌いなタイプなのに、アンタの言動を見るの、面白いんだわ。なんでかな。 だから、前の俺がアンタの事嫌ってても俺はそうじゃないから、俺に対して気を張るのは止めてくんないかな」
 26のカカシがこうだったから、当然14のカカシもこうだろう、なんて。そんな風に思われるのなんか冗談じゃない。
「・・・・・・・・でも、面白いってほめ言葉じゃないですよね・・・・・」
いや、突っ込みどころはそこじゃないだろ。とは思ったが、赤い目をして顔をしかめるイルカには、これ以上余計なことは言わなかった。
「いいじゃん。なんでも」
「・・・・・・・・いいですけどね」

 以前のカカシとは、こんな風に話しをする事もままならなかった。
考え方とか、物事の捉え方とか。随分沢山のカカシを知った気になる。
なんだか、世話係になって良かったなあ、などとさっきまでの居たたまれない状況も忘れて、イルカは嬉しくなる。
「じゃあ、とにかくご飯を食べちゃいましょう」
それから、今の里のことを詳しく話しますから。
その、あまりの立ち直りの早さにカカシは呆然とする。なんだかなあ・・・この人って・・・・。
箸の止まったままのカカシに、イルカは訝しげな目を向けながら言わなくていい一言を付け加える。
「好き嫌いあっても残しちゃだめですよ、カカシさん。子供は何でも食べなきゃ大きくなれませんからね!」
 しばらくの間、人気のない森にカカシの爆笑がこだました。




 ふたりだけの森の生活も十日目になって、すでにカカシは木の葉の里と、それを取り巻く諸外国の状況を全て把握してしまった。
そうなると、もう他にすることもなく、ただ黙々と修行をする毎日だった。
森から出ることも出来ないので「退屈だ〜」がカカシの口癖になりつつある。
そんなカカシを残して、イルカは何度か里に戻り火影宅の地下の資料庫にある膨大な数の文献を調べていた。
だが、カカシに掛けられた術についての記述は皆無に等しかった。
 呪文だけでは完成しないらしい事は分かっている。問題は、完成させるためのもう一つの要素だ。 術を受けた当のカカシも、当たり前だがその時のことは覚えていない。
文献を調べ始めてから一体何度ため息を吐いたことだろう。
「見つからなかったら、カカシさんはどうなるんだろう・・・」
今そんなことを考えても仕方ないのだが、気にし始めると文献調べも手に付かない。カカシ本人は全然気にしていないというのに。
 人の気配がして、アスマが顔を出した。
「あ、アスマ先生。お疲れさまです」
「おう。何かわかったか?」
「いえ、それが全然・・・・」
そうか、と苦い表情で壁を埋め尽くした資料の山を眺める。
「これだけあっても、役に立たねえもんだな」
「まだ全部見た訳じゃありませんから・・・」
「ま、そうだな。ところで、あいつはどうしてる?」
今朝のカカシの様子を思い出し、苦笑いをもらす。ほんの十日で、カカシはすでに森の生活に飽き始めていた。 任務でならともかく、なんの目的もなく(いや、目的はあるのだが。人目を避ける、という)じっと森の中で過ごすのは、 一線で活躍していた上忍にはいささか辛い物だろう。
「じっとしているのに飽きてきてますね、やっぱり。もう教えることもなくて、今は修行をする以外何もないですから」
「ああ、だろうな。14といやあ、前線を飛び回ってた頃だからな」
「前線・・・あの、カカシさんはいつ上忍に?」
「・・・・・・・カカシさん・・・・?」
まじまじと見つめられて、イルカは赤面する。術のせいで子供に戻ったとは言え、上忍相手にさん付けはやはりまずかっただろうか。
「あのう、そう呼ぶように言われて・・・。やっぱりまずいですか・・・?」
「へえ、いいんじゃねえのか?本人の希望なんだろ。よっぽど気に入られたんだなイルカ」
「そう、でしょうか?嫌いじゃないとは言われましたが・・・。お、面白いって・・・」
その瞬間、ぶはっとアスマが盛大に吹き出した。
「面白れえってか!そりゃいいや!」
何の遠慮もなく、がはがはと笑うアスマに恨みがましい目を向けながら、棚から一つずつ巻物や冊子を取り出しては内容を改める。
いくらなんでも笑いすぎだろう。そんなに「面白い」という人物評価が「面白い」んだろうか。
大体俺のどこが、そんなに面白いっていうんだ。顔か?行動か?まさか存在自体とか言うんじゃないだろうな。そんなイルカの心情は、 言葉にはしなくとも上忍のアスマにはばればれだった。
「そう拗ねるな、イルカ。いいこと教えてやるからよ。あいつのことを名前で呼べるなんてのはごく僅かなんだぜ」
「そうなんですか?」
「上忍にだって、そうはいねえな」
興味は引かれたが、なんと返していい物やらイルカは悩む。
「あいつが気を許した何人かと、あとはな。あいつの女くれえだ」
 どさどさどさっ。
手にした巻物が滑り落ちる。ぎくしゃくとアスマの方に視線を転じる。
「あいつの噂くれえ知ってるだろうが」
「・・・・女性関係がすこぶる派手だというくらいは・・・」
「そりゃ何とも控えめな表現だな」
 控えめ、とアスマが評したとおり、カカシの女性関係の噂は枚挙にいとまがない。
特に目立つのが一人の女性とつき合うサイクルの短さだ。長くてせいぜい一ヶ月、短い場合は三日なんてのまであるらしい。 それでなくても悪目立ちするカカシである。嫉妬やらやっかみやらも相まって「女性にだらしない上忍」という風評が里に行き渡ったのだった。
 それでもカカシに言い寄る女が絶えない事にイルカは何度も首をひねったものだ。それとなくアスマに訊ねると 「そりゃあ、カカシブランドの賜だろう」という答えが返ってきた。
「・・・カカシブランド・・・。何ですか、それ・・・」
「写輪眼の持ち主でよ、里のナンバー1とか火影に最も近い男だとか言われてんだろーがアイツ。 ま、要するにカカシに付きまとう付加価値のことだな」
「それって・・・」
開いた口が塞がらない。
「女なんてなぁ、どいつもこいつも現実的に出来てんだ。男を集めて価値を比べて、一番いいモノを選ぶ。 カカシの場合は女受けするルックスも一役買ってやがるしな。中身じゃなくて外側で判断されてりゃ、長続きは難しいわな」
「女の人って・・・すごいですね・・・・・」
しみじみカカシが気の毒になる。我が身を振り返って、平凡で良かったと心底イルカは思った。
「つーわけで入れ食い状態だったからなあ。そっち方面でもそろそろ大人しくはしてねえだろうと思うぜ」
「人に見られると不味いからあそこにいるって、分かってますかね。あの人」
「わかってねえ・・・か、わかってても無視、だな」
「やっぱり」
のこのこ里に舞い戻ったりしないように、しっかりカカシの管理をしなければ、と改めて心に誓うイルカだった。

 そんな風に話を続けながら、新しい棚に手を伸ばす。
ふと、いくつかの冊子の奥の方に、埃のかぶった巻物を見つけた。この資料庫は滅多に人の出入りはないが、その分管理はきちんとしている。
ここまで埃をかぶっている事はないはずである。恐らく棚の奥に押しやられて、こちら側から見えずに、 そのまま存在を忘れられていたに違いない。
 もしかしたら・・・・・。イルカは震える手で巻物を開いていく。
「アスマ先生、これ」
「おいっ!イルカ!これだろ、探してたのってよ!やったじゃねえか!」
それは禁呪の研究書のようなものだった。発動条件から術の効果から解呪の方法までを記してある。 これがあれば、カカシは元に戻るだろう。良かった、と思うその裏側でイルカは14のカカシはではどうなるのだろうか、 と考えずにはいられなかった。
「・・・カ、おいっ、イルカ!」
アスマがイルカの肩を揺する。
「あ・・・ああ、すいません。何でもないです」
「そうか。とにかくこれを三代目のところに持っていこう」
「はい・・・」
イルカにとって人知らずの森でのカカシとの生活は、いつの間にか何にも代え難い大事な物になっていた。 だが、カカシが元にもどればそれも終わりを告げるだろう。
ふるりとひとつ頭を振って、イルカはその嫌な考えを追い出した。




 火影の執務室にはイビキも姿を見せていた。
中々行方のわからなかったカグラに、やっと連絡が取れてこちらに向かっているとの報告に訪れていたのだった。 アスマは資料室から持ってきた巻物を火影に手渡す。
「ふむ・・・。確かに禁呪の研究書のようじゃの」
「カカシに掛けられた術は載ってますかね、三代目」
「あれはおそらく時間に関係する術じゃろうから・・・これじゃな」
「・・・・・冥魂の術・・?」
「ほれ、ここを見てみろ。冥魂香と共に用いる禁呪となっておる。おそらく、この香を体内に取り込んだ相手に対して効果を発揮する術じゃろう」
「掛けられた相手の時間を奪う、か。じゃあ、その冥魂香ってのを無効にすれば、カカシは元に戻るってわけか」
火影の言葉に対してフムフムとアスマは頷く。
「ところがねえ。そう簡単なモノじゃないんですよ、それ」
その場に集まった四人とは違う、のんびりした声が聞こえた。
「カグラ!早かったな!!」
「やあ、どうも。イビキもアスマも久しぶり。三代目もすっかりご無沙汰いたしまして」
 現れたのは、痩せぎすの背の高い男だった。
代々木の葉の医者の家系に生まれながら、大人しく医者として収まっているのを良しとせず、各地を巡って珍しい病や術の研究をしている。
イルカは会うのは初めてだったが、もちろん噂は知っていた。
「こっちの彼は初めてみる顔だけど?」
にこりと笑ってカグラがイルカに向き合う。
「ああ、イルカだ。カカシの世話をしてもらっている」
「へえ、ご苦労だね。あの当時のカカシの世話なんて」
「いいえ、そんなことは・・・」
「それはともかく。簡単じゃないとはどういう事だ、カグラ」
「まあ、ここを見てよ」
四人はカグラの指し示す箇所に視線を落とす。そこは術の解呪の仕方を記した箇所だった。
ここに、とカグラは言葉を続ける。
「冥魂香の調合の仕方と、それを無効にする逆調合の仕方が乗ってるだろう?だけど、ここには肝心な記述が抜けているんだ」
「肝心なって・・・配合の順序に決まりでもあるってのか?」
「そんな事じゃないよ。ほら、材料に血が必要だってあるだろう?それがくせ者ってわけだ」
「回りくどい言い方をするんじゃねえ。結論から言え、結論から」
カグラはどうやら、事態を面白がっているようだ。これだから研究者なんてのもは信用出来ないんだ、と苦く思いながらアスマは先を促した。
「この『血』は誰のでもいいって訳じゃない。やっかいなのは、これがある種の血継限界から派生した術って事なんだ」
 その場の全員が息をのむ。
血継限界・・・・・。カグラの一言で、部屋の温度まで下がった気がした。


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