誕生


記憶の日が
カレンダーに加わる

アスファルトの上の葉っぱと
分娩室の前の男には
落ち着く場所がない

婆ちゃんになるひとが
手を合わせて
こんな所にも
神様を呼び出している

苦痛の声を
小さな甥と姪が経験している

口実ができて
外に出る僕は何も考えられない

11月28日12時23分
今日はじめて
息をする

瞬間という時間と僕の首が
ゆっくり動き
いい天気といっしょに
二階の産声を見上げている


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作品の裏側( 誕生 )




 初めての子供の息子が生まれたときの詩です。
女性の方には、申し訳ないのですが、分娩室に続く廊下と言う場所は、何と言ったらよいか、男にとって辛い場所です。
 息み声・何かぶつぶつと祈っている私の母親・何が起こっているのだと不安な顔のちっちゃな甥と姪・何もできない私。

 <11月28日12時23分>
 <今日はじめて>
 <息をする>

 初めて息をしたのは、息子だけじゃなくて、朝からの騒動の中、私も産声を聞いたときに、初めて息をしたような気がしました。

 ガラス越しに初めて対面したとき、たくさんの赤ちゃんが並んでいて、ドキドキしながら探し、あの子じゃなかったら良いという顔の赤ちゃんが目に付いて、名札を覗き込んだら、私の奥さんの名前だったんですねェ!ショックでした。

 今は、親の欲目もありますが、背も高く、なかなかの男前です。モテませんが!
    ……息子の名誉のために念のため。……



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