顔 |
しょうじき 顔は 悲しいものは悲しいのだ 広がった観察の輪が悲しいのだ 求める=人間が悲しいのだ 愛は動詞だという口癖を 言わなくなった今は 悲しいものは悲しいのだという以外に 悲しいのだ 忙しいふりの顔は 飛ぼうとしなくなった鳥の進化より 悲しい 君の周りで ぼくの動詞たちは たしかに違っていたはずだ 見る聞く喋るが 努め 励んでいたはずだ 今が一番の季節の春でも 沈黙のままの無表情がこちらを見ながら 事が終わるような時こそ 見栄や義理や人情や 複数のわずらわしい世間に ただ顔は 悲しいこの場合 悲しいものは悲しいのだという顔で いたいのだ |