HOME | INFO | LIBRARY | JOURNEY | NIKE | WEEKEND | UPDATE | BBS | BLOG | LINK
WEEKEND / garage 147 / Day tripper / Weekend log life / Spas
Home > Weekend > Spas >shionohaonsen
SPAS

 2007/11/24 入之波温泉山鳩湯

風邪をひいてしまって、三連休の一日目を寝て過ごした。疲れもたまっていたのだろう。どれだけ寝ても寝たりない気分だが、昨日の冷たい風も止み、日射しはおだやかだ。気分を変えて、遠出のドライブと洒落こんだ。装備は完璧。米軍御用達のフライトジャケットに、帽子と手袋。それに膝掛けとマフラーまで用意したらオープン走行で決まりだ。とはいえ、風邪薬が抜けないので、運転は妻まかせ。乗るのは助手席である。

行き先は妻が見つけてきた吉野にある入之波温泉山鳩湯。なんでもお湯がいいそうだ。ナビで調べると4時間はかかるらしい。いつもよりは早めに家を出た。途中までは、この前行った洞川温泉と同じルートをひた走る。宮滝大橋で左折すると川上村に入った。大きなダムが迫ってきた。ダムの堰堤を渡って対岸に抜ける。紅葉が始まって山懐は錦秋の装いである。青い空にちぎれ雲が一つ二つ浮かんでいるのを眺めながら走る。

二つ目のダムを過ぎると、道幅は狭くなり、対向もやっとという山道にはいる。ダム湖に沿ってしばらく走っただろうか。車が何台も路上に停まっているあたりにお目当ての山鳩湯の看板が目に入った。ちょうど一台駐車場が空いたところに滑り込んで、歩きはじめた。温泉の建物らしきものもあたりにないので、車の並んでいるところまで行くと、橋の下に屋根が見えた。鉄でできた階段が下の方まで延びている。どうやらこれを下りるらしい。

一つ目の踊り場に下りたら、そこが帳場だった。一人700円の入湯料を払って中に入った。時間も正午過ぎ。まずは腹ごしらえだ。山の中の一軒家らしく、しし鍋、しか鍋といった山家のメニューが並んでいる。妻はあまご釜飯、私は山菜定食を注文した。はじめに運ばれてきたのは山菜定食の方。標示に偽りありというのが昨今の風潮だが、何とみごとなまでに山菜尽くし。焼き魚の一品どころか天麩羅もなし。ぜんまい、蕨、虎杖といった山菜が小鉢や皿に幾つも並ぶばかりだ。妻があまご釜飯を分けてくれた。こちらはあまごの風味が飯にうつって絶品であった。山菜もいい味だったが、ちょっと寂しいものがあった。

さて、お湯の方だが、階段をまた下りて、三つ目の踊り場にのれんが掛かっている。貴重品入れはコインが返ってこない百円ロッカー。大事な物は車に入れてくることだ。当然、脱衣室はただの籠である。狭い脱衣室から浴室にはいると、まずその湯の色に驚く。淡い茶褐色に濁った湯の表面にはカルシウム分が浮き、浴槽の縁は凝固した成分で鱗状になっている。39.5度の源泉かけ流し。天井近くに吊られたパイプから滝のように浴槽に落ちる様は豪快である。

浴槽は深く、棚状のものが設えてあり、そこなら腰を下ろせるが、それ以外では床に腰が下ろせない。露天風呂は、窓硝子の向こう、ダム湖を見下ろせる絶景のポイントにあった。天井は半透明の波板トタンの上に葦簀張りで日覆いがしてあるが、軒が浅いので、露天気分は充分味わえる。南に向いた露天風呂からは日を浮かべたダム湖の凪いだ湖面が見渡せ、何とも爽快な気分になれる。

泉質は含炭酸重曹泉というめずらしいもので、神経痛などにいいそうだ。出たばかりは透明なのに空気に触れると茶褐色に変わるというが、わずかな硫黄臭はあるものの手触りにも特別なものはなく、顔をこすってもぴりつかない。何より、適度な温度がことのほか気持ちよく、冬場はともかく、この季節ならどれだけでも入っていられるのがうれしい。

ドライヤーが壊れていて、髪が乾かせないのは困ったが、一つ上の階には、ダム湖の眺望が素晴らしい休憩室が用意されていて親切だ。食堂にはうまい酒と肴が用意されていて、他に何もすることのない山中の一軒宿である。親しい友と来て、飲み明かすもよし、一人懐中に文庫本などしのばせて日がな一日、温泉と読書に耽るのもよし。大人の隠れ家としては、またとない湯宿である。紅葉も見頃となれば、興趣も一入湧こうというものではないか。如何。

< prev pagetop next >
Copyright©2007.Abraxas.All rights reserved.since 2000.9.10