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 2006/12/29 リフォーム

ふだん、あまりていねいに掃除をしていないから、年末くらいはと思って、毎年大掃除はまじめにやっている。家は、結婚当初に建てたものだから、すでにローンも終え、リフォームを考えねばならない時期に入っている。風呂場と屋根、外壁は必要に迫られて改修済みである。外見は建てた当時とあまり変わっていないが、中に入ると、かなり傷みや汚れが目立ってきた。

ホームセンターに寄ったついでに買ってきた壁紙で、ニケが破いたトイレのドアを張り替えると、見ちがえるようになった。煤ぼけていた障子紙も全部張り替えると新年を迎える気分になってくるから不思議である。障子はともかく、襖や壁紙は素人では無理だと思ってしまいがちだが、近頃では便利な道具も揃っている。妻にそそのかされてやってみたが、結構面白い。今度は和室の襖に挑戦してみようかと思っている。

暮れが近づいたので、軽トラックに注連縄を載せた業者が町内を走り回っている。どういう理由かは知らないが、余所では正月の間だけ家の戸口に飾る飾り物をこの地方では年間を通して飾るのが風習になっている。我が家は二枚の木製扉を観音開きにした玄関である。この上に一年間を通して、大相撲のまわしのような飾り物をつけておく気には到底ならない。

そんなわけで、この二十数年正月の飾りはパスしてやってきたが、特に神様のお怒りもないようなので安心している。子どもが小さい頃はクリスマスのリースは飾ったりしたが、正月が来ても玄関に飾り物はない。さっぱりしたものである。固く絞った雑巾で玄関のドアを拭くと、一年の汚れが落ちて、それだけで新年を迎える準備はできた気がする。

ふと見ると、真鍮製のドア・チャイムにつけた紐が雨ざらし日ざらしでちぎれかけている。台に固定するのに使用した木ねじも錆びついている。こういうこともあろうかとノルウェイに行ったとき、ヘラジカの飾りの付いた黒い鋳物のドア・チャイムを買ってきてあった。さっそく取り付けると白い壁によく似合う。

古い物を大事にせず、何でも新しい物を喜ぶこの国の心性がもう一つ好きになれないでいる自分だが、他家のように正月気分を盛り上げる飾りがないだけに、真新しいドア・チャイムのついた玄関周りはちょっといいかもしれないなどと思ってしまう。

今年、この国は首相が交代したことをきっかけにずいぶん、思い切って新しくしたものがある。言うまでもなく教育基本法と防衛庁の省への格上げである。我が家も築二十年を経てずいぶん傷み出してきたが、建て替えは考えていない。この家を建てるために三十枚以上の図面を引いた。実際住んでみると不便なことも多いが、自分の考えた家には愛着がある。

伊勢神宮は二十年ごとに建て替えるので有名だが、建築技術を次世代に継承させるには二十年というのが限度だという考えがあるらしい。日本は戦後の体制というものを真剣に考えることなく六十年たってしまった。今となっては、戦争の真の怖さを知るものはみな他界するか引退してしまっている。

若い首相はこの国の戦後のあり方には愛着が持てないようだ。スクラップアンドビルドを考えているようだが、スクラップにした後で建て替えるだけの力量があるのかどうか、不祥事続きの閣僚を眺め回すと心もとない。トイレのドアの壁紙くらいなら貼り替えることはできるだろうが、残念ながら国家を支える基礎から設計できるだけの力はお持ちでないように見える。無理な建て替えなど考えず、時代の変化にあったリフォーム程度でお茶を濁しておいたらどうかと愚考するのだが。如何。

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