HOME | INFO | LIBRARY | JOURNEY | NIKE | WEEKEND | UPDATE | BBS | BLOG | LINK
LIBRARY / REVIEW | COLUMN | ESSAY | WORDS | NOTES UPDATING
Home > Library > Column > 0611 

 2006/11/13 同窓会

風の寒い日だった。会場の料理店までバス停一区間を歩いただけで冷え凍ってしまった。

半月ほど前、小学校当時の同級生から電話がかかってきた。しばらく会ってないから集まって話でもしようと、近くの割烹に集まることになった。同窓会とはいっても、二、三年に一度は開いている。それに近くに住んでいる者ばかりだから、スーパーなどで時々顔を会わせてもいる。それでも、一堂に会することがしばらくないとなんとなく物足りなくなってくるらしい。

電話の話では、同級生がまた一人亡くなったようだ。これで、もう三人目だ。三年も間をあけると、心細くなるのだろう。日曜日の正午に集まることになった。こういう話は誰か音頭をとるものが必要だ。電話をかけてきたのがそんな子で小学校当時は、女だてらに男の子を泣かせていた猛者だったが、人生も半ばを過ぎると、円熟味を増してくるようだ。

かくいうこちらは、いくつになっても世間知らずで、人の役に立つどころか、世間的なつきあいも満足にできない半端者である。前々回の会をすっぽかしかけたので、今回も当時いちばん仲のよかったTが心配して前もって電話をかけてきてくれた。

十数人は集まっていただろうか。親の介護やら何やらで、常連の何人かは顔を出せなかったようだが、近況報告などしているうちに座はぐっとにぎやかになった。誰かが気を利かせて幼稚園の卒園式の記念写真を大きく引き伸ばしてきてくれていた。一クラスが五十人弱いた頃だから、二クラスで百人近くもいると、「こいつ誰だったかなあ?」という顔も一人や二人ではない。

そんな中に、みょうに気になる顔が一人いた。
「これ誰だった?最前列の左から四人目のこの子。」
「あきらくんじゃない?○○あきら。」
写真を持つ手が震えた。

その名前に聞き覚えがあった。ハンドルネームで呼び合うのがふつうのオフ会に、本名らしき名の名刺があったので記憶に残っていたのだ。何度か顔を会わすうちに、年格好も似ているので親しくなった。そういえば、小さい頃この辺に住んでいたと聞いたことがあった。学校当時の記憶がなかったので、どこかですれ違っているのだろうと思っていたが。

よくよく見ると眩しそうに細めた目のあたりに今も面影が残る。そうか。同じ幼稚園にいたのか。縁は異なものというが、この年になって再会するというのも不思議な気がする。もしかしたら、こちらが気づいていないだけで、向こうは覚えていたかもしれない。そうだとしたら、じつに申し訳がない。

言い訳するわけではないのだが、同級生がしっかり覚えられなくて、いつも失礼ばかりしている。今回も隣に座っていた子に、中1の時の話をしていたら「同じクラスだったじゃない。もう、○○君ときたら口ばっかりで。いやになっちゃう」と叱られたのだった。向かいの席から、「二年生の時は俺と同じだったぞ。覚えてるか?」と、言葉が飛んできた。集中攻撃である。

小さい頃は、成績もいい方で、担任にも可愛がられていた。それをかさに着ていたわけでもないだろうが、態度が大きかったのか、同窓会がある度にいびられるような気がする。もしかしたら結構イヤなやつだったのかもしれない。クラスメートの顔も覚えていないのだから責められても仕方がないが、あの当時、仲よくつきあっていた友だちのことはしっかり覚えている。

今と同じで、少し世間からはぐれていたのではないだろうか。友だちの近況やら、舅の愚痴やらで盛り上がっている会の中で、人と同じ話題がなかなか見つからない。本の話や車の話なら何とかつきあえるのだが。二次会で、車好きの男を見つけてやっと愛車の話ができた。

夜道を歩きながら、自分以外は、結構連絡を取り合っているのだなあとあらためて気がついた。年賀状も世紀の変わり目をダシにやめてしまっている。自分から降りておいて勝手なものだが、仲良しグループに闖入しているような気がしてきた。

近くに住んでいても、顔を出さない同級生が何人かいる。仲良しグループの中に入りそびれているのかもしれない。そう考えると、同窓会なんてものは、お互い連絡が途絶えて何十年くらいたったところで、盛大に開くくらいがいいのではないか、などと思ってみたりもするのだった。

pagetop >
Copyright©2006.Abraxas.All rights reserved. since 2000.9.10