「さあ、オネーサン、スタンドだよ」
「…5と6と7で18。 …ハッ…ハックシュン!! …あすたろー君は?」
「ボクは4と7とJでブラックジャック。またボクの勝ちだね…ってオネーサン大丈夫?風邪じゃない?」
「ちょっとくしゃみが出るだけよ。…でも、どーして私があすたろー君に負てばかりなの?どーしてよ?」
「それは、オネーサンが弱いから…」
「だって、私は人間よ。万物の霊長なのよ。どーしてその私があすたろー君みたいな不思議動物にブラックジャックで負けちゃう訳?納得いかないわ!」
「…オネーサン、人間だから何にでも勝てるってわけじゃないんだよ」
「どーして?人間は地球上で一番進化した動物なのよ。他の動物達とは全然レベルが…ハ…ハックシュン!!…違うのはずよ」
「うわっ! オネーサン、つば飛ばさないでよー。…実はね、人間は地球で一番進化したではないんだよ」
「え…?どーういうこと?」
「知りたい? じゃあ進化の秘密を求めて出発だー!」
「あ、鼻水が…」
「あずだろーぐん、ごごはどご?」
「オネーサン鼻水出てるよ…ここは約500万年前の地球さ。場所はアフリカかな?」
「ふーん、で。ここに何があるの?」
「オネーサン、あそこ、みえるかな?」
「うーん、あ、あれ?小さなピラミッドみたいなヤツが並んでいるわ」
「あれを作ったのが、その噂の生き物達さ。彼らはすでに死者を弔う風習をもっていたんだ」
「へー、お墓を作るんだ。でも、それって人類じゃないの?あすたろー君」
「それが違うんだなー。じゃあ見に行こうか?」
「何を?」
「この時代の人類」
「オネーサン、アレを見てご覧」
「ん?どれ?」
「オネーサンにあの木の上にいるの見えるかな?」
「もちろんよ、こう見えても私は視力は3.0あるんだからね。スコープ無しでも狙撃できるくらいに目がいいのよ」
「…狙撃?…それはともかく、あれが実は人類の祖先なんだ」
「え?マジで!?あのチンパンジーみたいな顔をした毛深いやつが人類の祖先なの?」
「あれがこの時代の人類の祖先ラミダス猿人なんだ、あんな猿にお墓を作る知恵があると思う?」
「思わない」
「でしょう。…で、あのラミダス猿人より…!!オネーサン伏せて!」
「痛っ…何するのよ…」
「いいからじっとしていて…オネーサン、あのラミダス猿人のいる木の下にいるやつ、見える?」
「…あれ?あのゴリラみたいなヤツ?…大きいわね3mはあるわよ。あ!あの大ゴリラ、猿人をとっ捕まえたわ。すごいジャンプ力ね…って。あ!うそー」
「…喰われちゃったね、あのラミダス猿人」
「うん、骨を噛む音がここまで聞こえる…。あの大ゴリラいったい何者なの?」
「実はあれが、今の人類より進化するはずだった類人猿なんだよ。さっきのお墓を作ったのも彼らさ。オネーサン」
「マジで?あんなゴリラが?信じられないわ」
「でも、人類だってこの時代はあのラミダス猿人なんだし、あの大ゴリラは脳の大きさが人間の1.5倍もあるんだ。それに人類よりはるかに早く2足歩行をしている」
「そうか、可能性はあるわね。あの喰われた猿よりは賢そうだし…あ、あの大ゴリラもしかしてこっち見てない?」
「え?あ、そう見たいだね…ヤバイな。オネーサン逃げよう」
「そうね、走りましょう」
「はあ、はあ、はあ、どうやら振り切った見たいね。ズズッ、あ、鼻水が出てきちゃったわ。あすたろー君、大丈夫?」
「今のところは…!オネーサン危ない!!」
「キャッ! 何?何か飛んできたわよ。あすたろー君!」
「…木の枝?…いや、違う。見てご覧オネーサン、この枝」
「ちょっと何落ち着いているのよ。危ない!また飛んできた。いったい何よコレ?」
「ほら、切り口がこんな綺麗。それにわざと尖らしてある。…これは飛び道具だよ」
「…まさか」
「この枝結構しなるから、きっとこれをばねみたいにして飛ばしているんだよ。ヤツら結構賢いね」
「感心している場合じゃないでしょ。どーするのよ、見てみなさいよ囲まれているわよ、ぐるりと全部あの大ゴリラに!」
「本当だ。どうしよう、オネーサン?」
「うーん、仕方がないわね、とりあえず匍匐全身で移動しましょう。あすたろー君も伏せて」
「もう少しよあすたろー君、あの岩を抜けたら走るからね。物音立てたら…ハッ…ハッ…ハックション!しまった!!」
「あー!もう、気づかれちゃったじゃないか。どーするんだよ。オネーサン」
「…ええいしょうがない。ハックシュン…コレを使うか」
ジャキッ!
「オネーサン、それ…ガトリング砲?いったいそんなものどこに隠して…」
「これはM134ミニガンっていうの、見たことない?」
「うーん、どっかで見たような…って、まさか…」
「あすたろー君!邪魔!!」
ダダダダダダダダダダダダダダダ!!
「うわうわうわうわ」
「今よ、走るわよ、あすたろーく…ハックシュン!」
「結局今人類が繁栄してるってことは、あの大ゴリラは絶滅しちゃったって事よね?あすたろー君」
「そうだね、時期も原因も不明だけど。そういうことになるね」
「気になるわね、どーしてあの大ゴリラが滅んじゃったのか…ハッ…ハッ…ハックション!!」
「………あ……もしかして……」
「なに何?なんか思いついたの?」
「うーん、何となくねー」
「それより、あすたろー君、スタンドよ」
「ボクはJとA、ブラックジャックだ。ごめんねオネーサン、また勝っちゃったかも」
「あら、あすたろー君。私は45よ」
「それは…45口径のコルトSAAリボルバー…それを向けられては絶対に勝てないね、ボクの負けだ」
「素直なあすたろー君って大好き」
カードゲームは相手を選ぼうね See You!!
「あすたーろー君!あすたろー君!これ見てよこれ」
「うーん、その緑の怪物の本がどーかしたの?」
「これは緑の怪物じゃないわよ、ええっと…(パラパラ)ほら、名前はモリゾーとキッコロって言うの。愛・地球博のマスコットよ」
「えー、この無感情な目をした緑のワサワサがマスコット!?このキャラクターからは愛嬌もやる気も感じられないよー。で、『愛・なんらたらかんたら』って何?」
「『愛・地球博』って言うの、別命『故・名古屋オリンピック代替イベント』って言うらしいわよ」
「…オネーサン、『名古屋オリンピック』って何?」
「全然知らないわ。でも、この『愛・地球博』はすごいのよ、メインテーマは『自然の叡智』で21世紀の自然と人との係わり合いを探求し、提案していくという、環境を重視した博覧会なのよ」
「本を棒読みしてるけど、それってすごい事なの?」
「そりゃあすごいわよ、特にすごいのがマンモスよマンモス!ええっと・・・1万8千年前にシベリアで氷漬けにされたマンモスが発見されたの。それで、ユカギルマンモスって名づけられて、これは地球温暖化で永久表土が解けて、私達の貴重な資料が無くなりそうなの。で、メインテーマの『自然の叡智』を具現化するためにこれを研究して環境と生命のかかわりの謎を解明しようという試み…」
「オネーサン、言っている言葉は一応分かるんだけど、言いたい事が伝わってこないよ」
「…つまり太古のロマンよ、ロマン!ワタシ昔から考古学って憧れていたのよね。土器とか遺跡とか古墳とか」
「ふーん、オネーサンそういうのに興味あったんだ。だから豚ばら肉を冷凍庫に3年近くも保存したりするんだね」
「…(怒)そうだ、あすたろー君、ワタシを古代に連れて行ってくれないかな?一度この目で見てみたかったのよね、縄文時代とか弥生時代とか」
「うーん、どうしようかな…」
「何で迷ってるのよ、いつものあすたろー君なら『それじゃあ、出発だー』ってムリヤリにでも連れて行ってくれるのに」
「…あのねオネーサン…実はね…」
「何よ煮え切らないわね、どっちなの?連れて行ってくれるの?それともダメなの?」
「あ!も、もちろん行くよ、う、うん、喜んで行きましょう」
「それじゃあ、古代へ出発よー」
「…そのウィンチェスター銃は持って行かないほうがいいと思うよ…下手に使って歴史が変わるかもしれないから…」
「あすたろー君、ココは当然縄文時代の日本よね?」
「もちろん日本さ、でも時代は弥生時代、紀元前3世紀の九州地方さ」
「へー、あ、あそこに見えるの高床式じゃないの。わお、感激!前に見たのよりもっとデカイわよアレ」
「あ、そう?オネーサンが見たのは復元モデルじゃないかな、あれは遺跡から想像したものだからね。実物と違うのも無理は無いよ。写真や正確な絵が残っていたわけでもないからね」
「あすたろー君、近くに行ってみようよ」
「…ねえ、何かおかしくない?ココ。本当に弥生時代なの?」
「もちろん弥生時代だよ。今の日本にこれほど緑が豊かな平地ってある?ビルも車も道路も電線も全然無いでしょ?」
「でも、あの高床式に出入りしている人たちは、どう見ても江戸時代の農民みたいな格好してるし、高床式の周りの建物は確かに竪穴式住居だけど、皆珍しそうに見て廻っているだけよ。あの家で生活しているようには見えないわよ。」
「…うん、そうだね」
「土器や埴輪を持っている人もいるけど、なんとなく楽しそうに持ち運んでいるわよ。子供に持たせている親子連れまでいるわ。本に書いてあったような葬祭のためのアイテムには思えないんだけど…」
「…うん、そうだね」
「それに、高床式の中も変よ。これは食料をためる倉庫だったはずよ。なのに、この中は割れた埴輪や土器があるだけよ。まるで…」
「まるで、現代の歴史公園みたい?」
「…まさか!」
「そう、そのまさかなんだ。時代は確かに弥生時代なんだけど、実際この時代の人たちは結構高度な文明を持っているんだよ。ほら、こっちに見えるのがこの時代の人たちの普通の家さ」
「あれが…屋根は藁葺きだけど、あの安っぽい木造の建て方は江戸時代の農民の家みたい」
「そうなんだ、実は5千年前の縄文時代には既にこの程度の文明があったんだ。その後、このレベルの文明が江戸時代まで続いていくんだよ」
「で、ここだけ大昔の状態を保っているという事なのね。現代の歴史公園みたいに」
「そうなんだよ、オネーサン。この弥生時代よりさらに1万年まえの縄文初期の遺跡なのさ。この高床式はこの公園の目玉の復元モデル。周りの竪穴式住居は記念品を売るお土産屋さんなんだよ」
「じゃあ、あの土器や埴輪がみやげ物なのね。…それじゃあ現代と同じじゃないの」
「まあね」
「で、これら太古のレプリカやみやげ物を掘り起こした現代人は、これが2千年前の文明だと思っているわけなのね」
「そうなるね」
「なんだかがっかりしちゃったわ。古代のロマンが勘違いの固まりだったなんて…」
「しょうがないよオネーサン、その時代の本当の住居跡なんて2千年かかって何度も再開発されてるんだから、何も残らなくて当然だよ。あそこは公園だから長い間ほぼ手付かずだったんだ。だから高床式の遺跡が見つかったんだよ」
「はぁ〜(ため息)」
「まあまあ、マンモスは紛れも無い古代のロマンなんだから。それでいいじゃない」
「でもねー。…ん、そうすると…あすたろー君!もしかすると…今復元している遺跡なんかもさ、あと2千年したらまた誰かに掘り起こされる可能性もあるわけよね?」
「うーん、その間に文明が途切れて記録がなくなったりすれば、そういうこともあるかもしれないね」
「じゃあさ、その発掘をした人は『今から2千年前、つまり西暦2千年前後の日本人は高床式の倉庫を作り、埴輪や土器を使って竪穴式の住居に住んでいたようです』なんて思うかもしれないわね」
「それはあるかもね」
「それじゃあ、未来の人たちが勘違いしないように、現代的な物もたくさん埋めとかなきゃいけないわ。車・PC・冷蔵庫…ペットボトルに蛍光灯なんかがあると生活感が出るわよね」
「…オネーサン、そんな物を埋めたら環境破壊になるんじゃないかな?」
「…そういう意見もあるわね…」
それじゃあまたね See you!