紀東遠投釣法
 そもそも紀東で遠投釣りが盛んになったのは、足元の釣り荒れも原因の一つだが、海女さんや潜りの漁師に聞くと、沖のシモリ付近にはかなりの石鯛が着いていて、水深の浅い場所でも見かける。そんな情報から広まっていったようだ。また地形的にも、足元ドン深の釣り場より遠浅の釣り場が多く、昭和50年代から主流の釣り方となってきた。

 遠投をするためには、やはり錘負荷が40号以上のタックルが望ましく、負荷を掛けすぎるとタックルの破損にも繋がるので、メーカーの出している数値を参考にして選んで頂きたい。またこれから購入を考えている方なら、各自の体格や体力により知人等のタックルを参考にしたり、釣具屋で相談して購入して頂きたい。

※キャスティング

 先ず投げる時のフォームは、左手親指でスプールを押さえ、右手は1番ガイドの少し下付近を握り、道糸を親指または手のひらで押さえ構える。最初は軽く振る感じで、右手(右利きの人)の道糸を離すタイミングを掴む。その時左手の親指はリールのスプールに添え、放物線がピークあたりで軽くスプールを押さえ、着水と同時に強く押し当てて回転を緩める。錘が沈み始めたら再度親指を離し着底させる。

 投げている途中でパーマになりそうなら、スプールの調整ツマミで調節する。感じが掴めたら左手を手前に、右手は押し出す感じを意識し、振りきった時に右ヒジが伸び切り、竿が45度くらいの角度で静止すると1番飛距離が延びる。最近のリールは性能も良く、パーマをおこしにくい設計になっているので、慣れてきたら思い切って振りきりたい。
 現場でいきなりより、人気の無い河原等での練習が望ましく、目印を定め正確に投げられるように練習する。実際の釣り場で前方に目標が有る場合は、その目標に向かって投げるが、前方に無い場合は、自分の立ち位置と振りかぶった時に竿の穂先がくる位置(自分の背後)に目印を置き、正確にキャスト出来るようにする。その目印には、ピトンの足やハーケンを邪魔にならない高さに打ち込んだりしている。左足が少し前に、足場の良い場所を探す。

※底取り

 正確に投げられるようになったら今度は底取りで有る。こちらでは底取りと呼んでいるが、錘の手に伝わる感触で底の形状を探る事を意味している。まず釣り場へ着いたら、高場が有れば出来るだけ高い位置から海を眺め、水面下のシモリとか干潮時には顔を出すような瀬を探してみる。そして目星を付けたら出来る限り遠くへ投げる。なぜなら広範囲で探る事が出来ればそれだけチャンスが広がるからで、初めての場所や新しく探るポイントでは錘だけで投げる。余分な根掛かりを防ぐ為と、手に伝わる感触がダイレクトで解りやすいのでそうしている。

 投げた後、錘が着水した時点でリールのスプールに親指を当て同時にカウンター付きのリールであればその時の数値を見ておく。そうすることでその後着底したときのカウンター数値との差がおおよその水深になるわけで、左右に投げ分けて探る時の参考になる。

 錘が底に着いたら余分な糸フケを取り引っ張る。この時余りズルズルと引っ張ると根掛かりの原因になるので少し鉛を弾ませるように竿にアクションを掛け手前に手繰ってくる。水深の有る場所や流れが速い場所、または釣り座が高い場所等の釣り場により、竿を寝かしたり立てたままにしたりして底を探る。同じ感覚で錘を引っ張ると、その錘が同じストロークで沈まない位置、即ちそこがシモリや駆け上がりになっている。また手繰っていて錘がスルスルと竿を前方に傾けないと錘が底に着いた感触の伝わらない様な場所が、シモリからの落ち込みや溝になっていると考えられる。それらのカウンター数値を憶えておき、その後も一気に巻き取らず、続けて手前に底取りを続ける。

 次に左右に釣り人や障害物が無ければ、可能な範囲で探ってみて、先に変化の有った場所が左右に振り分けたときに同じ位置にあるか確認してみる。数値で現して見ると、先ず投げ込み着水地点が70mとして、着底値が80m これで大体水深が10mと予想される。続けて手前に手繰り錘の感触が重く感じた場所が60m、更に手繰ると55mまでは錘の伝わる感覚が短く50mで一端落ち着いた。50mから手前で竿を3m程前へ倒し着底。このことから60mの位置からシモリが有り55mを頂点とし50mまで続き、その後に落ち込みや溝が有ると予想出来る。こう言った感じで頭の中で海底の様子をイメージしてポイントを絞っていく。また投げても海底がフラットな場所や、底取りをするのも嫌になるような根掛かりの多い場所、また無理に遠投しても道糸が明らかに瀬に擦れる様な場所では、遠投が不向きと判断する。

地域により遠投釣りが出来ない場所も有り、そのような場所では地の釣り方で、トラブルの無いように釣行を心がけたい。 2002

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