お姫様



「ああ、愛しい愛しいこみ王子。ワタクシのこの黄色い花があなたに届きますように」

「オーホホホ、今のをお聞きかい、米寿や」

「ええ、聞きましたわ、聞きましたわ。サターンお姉さま」

「まあ、大きいお姉さまと小さいお姉さま。ノックもせずに・・・失礼ですわよ」

「だって、あまりにも愉快な世迷言が聞こえてきたのですもの」

「そうよそうよ、ポンテローザがこみ王子とだなんて、ねえ」

「でも、あくせく園トマト王国の継承者の権利はワタクシにもあるはず・・・」

「オーホホホ、まだそんな夢物語にうつつを抜かしているのかい」

「そうよそうよ、あつかましいったらありゃしないわ」

「お言葉ですけど、種の時分から王子のご寵愛を受けていたのはワタクシだけ・・・」

「んまー、図々しい。ポットで水やりを忘れられて泣いていたのは誰でしたっけ」

「そうよそうよ、あなたは枯れかけていたじゃないの」

「そ、それは・・・」

「ほらごらんなさい。王子はあなたになんか気をかけてはおられないのよ」

「そうよそうよ、所詮あなたはなぐさみもの」

「ひどい・・・お姉さま方だって、会員10%オフの特売日に買われた苗じゃないんですの?」

「おだまんなさい、ポンテローザ。ワタクシたちは正当なメーカーで育てられたいわばエリート。あなたとは格が違うのよ」

「そうよそうよ、あなたはどこの馬の骨なのよ」

「・・・わかりましたわ。ではワタクシもヒトコト言わせていただきますわ。サターンお姉さま。お姉さまは接木苗でしたわね。ということは半分はトマト族以外の血。それこそ王家にはふさわしくありませんわ」

「ななな・・・。」

「それに米寿お姉さま、そんな年寄りくさい名前、王妃には似合いませんわよ」

「し、失礼な。ワタクシは‘強力’米寿よっ」

「ポンテローザ、口が過ぎますわよ。えいっ」

「あっ、ぶったわね。えいっ」

「あっ、逆らう気? えいっ」

「ワタクシもワタクシも、えいっ」

「あっ、あっ。負けないわ。えいえいっ」

「あっ、なまいきな。えいっ」

「あっ、くやしい〜、えいっ」

「あっ、えいっ」

「あっ、えいっ」

「あっ、こなくそっ」



「よいか、子供たちよ。このようにしてトマトたちは赤く色づいていくのじゃよ」

「うっそだ〜い」






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