「おかあさん・・・」
「あら、どうしたの? 眠れないの?」
「こわい夢をみたの」
「こっちへいらっしゃい・・・さあ、もう大丈夫。おかあさんがそばにいてあげますからね」
「うん」
「じゃあ、話してごらんなさい。どんな夢をみたの?」
「あのね、あのね。ボクがゼッタイダメだっていったのにね、こみがね、ニンジンの種をばら蒔きにしちゃったの。ボクはスジマキじゃなきゃいけないって言ったのに、こみはワッハッハって笑いながら、大事な黒田五寸を全部蒔いちゃったの。だから、芽が出たらあちこちに密集してるし、間引きはめんどくさいし、土寄せもできないの。追肥は液肥しか使えないし、株間を取るのだってたいへんなんだ。あんなにダメだっていったのに、こみが、こみが・・・」
「それは夢よ。もうおやすみなさい」
「でも、また夢にこみが出てきたら・・・」
「そんなときはね、こう言っておやりなさい」
「どう言うの?」
「お前の作るウネはいつも曲がってるからまっすぐスジマキにできないんだろうってね」
「そう言ったらいいの?」
「きっと、逃げちゃうわ」
「わかった。ボクそう言うよ。おやすみなさい」
「その前にひとつだけおかあさんに教えて」
「なあに?」
「こみって何なの?」
「あのね、三角眉毛のバケモノ」
|