「はーい、だあれ。あっ、何?マリーゴールド子じゃないの。いったいどうしたの?」 「ゴメン。ナスタチウム子。突然来ちゃって」 「ともかく入って。ほら、泣かないの。さ、座って。あの男ね。こみと何かあったんでしょ。あたしに話して」 「こみが、こみがね。ナスが終わったからおまえは邪魔だって。あたしはただの線虫予防のために植えただけだって」 「で、ひっこぬかれたの?」 「ううん。引っ越せって。でもね、バケツみたいな味もそっけもないプラスチックの鉢にスコップでガサって。まるでサトイモだわ。それじゃあたしだって枯れちゃうわよ」 「それって、あなた、咲いてる最中だったんじゃないの」 「そう。なんとか若い花だけは咲かせ続けたわ。だけど、花壇ではそれじゃダメなのよ。まわりが枯れてたから捨てられちゃったのよ。うわー」 「泣かないでったら、もう。いいわ。あなたに話す時が来たようね。あたしはね、キュウリの横に植えられていたの。アブラムシの誘引のためだったわ」 「えっ、ナスタチウム子も」 「キュウリってね、下から枯れてくるの。でも上の方では実をつけるのよ。だからあたしは収穫のたびに踏まれたわ。しかもキュウリは終わるのが早い。あたしはネットと一緒に片付けられたの。鉢に植えられることもなくね」 「ナスタチウム子・・・」 「コンパニオン稼業の宿命ね。さあ、今日はみんな忘れて二人でパーっとやりましょ」 「うん」 「シュプレヒコール!」 「おー!」 「こみは花も大事にしろー!」 「大事にしろー!」 「こみは花の名前も覚えろー!」 「覚えろー!」 「こみは組み立てたばかりの食器棚をぶつけて穴をあけろー!」 「穴をあけろー!」 こうしてこみは、趣味のキャンプ用品用に買った食器棚を組み立ててすぐぶつけて穴をあけてしまったのだった。 |