第一回 あくせく園農機具人事異動会議



「おい、クワよ。えらい狭なったのう。」

「そやな、スキよ。あいつが来てからや。おまけにガソリン臭なった」

「この物置の8割方あいつが占めとんやで」

「おかげでわしら棒モノは肩寄せ合うとんのや」

「そやのにあのこみは“コーウンキコーウンキ”ってうかれてやがる」

「見たか、しまうとこ。熱冷まして、土落として、草の根とって、汚れ拭いて」

「わしなんか、石に当たって曲がったままほったらかしや。あのこみめが」

「わしゃ、しまうとき土がついとってもコンクリートにカーンで終わりや。あのこみめが」

「あんたら棒モノだけやないで。わしら刃物かてな、拭かん砥がんでサビサビや」

「おお、カマの言うとおりや。この物置にサビてない者はおらんで」

「おーいおいおい」

「誰や、呼んでんのは」

「呼んでるんとちゃいます。泣いとるんです。おーいおい」

「噴霧器やないか。あんたしばらく見やんかったな」

「はい。コーウンキがこの物置に来て、代わりにあたしゃ隣のベランダストッカーに左遷されたんです。ついこの間まではチヤホヤしといて、気が移ったらこの仕打ちですわ」

「ひどい奴っちゃな。あのこみは。ろくな死に方せんで」

「許せんな」

「いてまおか」

「シュプレヒコール!」

「おー!」

「こみは農機具を大切に扱えー!」

「大切に扱えー!」

「こみはメンテナンスもしろー!」

「メンテしろー!」

「こみはしょうゆ皿にサトイモ落として服にしょうゆ飛ばせー!」

「しょうゆ飛ばせー!」

こうしてこみはサトイモをしょうゆ皿に落とし、トレーナーを汚して妻に叱られたのだった。






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