おくさま



「こみ島さんのおくさまぁ、いらっしゃるぅ〜」

「は〜い。あら、こみ原さんのおくさま。どうなすったの」

「実はねえ、知り合いからメロンをいただいたんですけど」

「まあ、メロン?」

「ええ、それでおすそわけと言ってはなんなんですけど・・・」

「あらまあ、いつもすいませ〜ん」

「いえいえ、ほんのわずかですけど。ちゃんと洗っておきましたから」

「洗う?」

「ええ、おいしいメロンの種ですわよ」

「は? たね?」

「ほら、おたく家庭菜園なすってるでしょ」

「ええ、まあ・・・」

「ちょうどよろしいかと思って。じゃ失礼いたします〜。オホホホホホ」

「・・・・・むぎぎぎぎ」






「おくさまぁ、こみ原さんのおくさまぁ」

「あら、こみ島さんのおくさま」

「先日はどうも」

「まあそんな、たいしたことじゃありませんのに」

「お返しと言ってはなんですけど、ウチの畑でダイコンが採れましたの」

「まぁ、それは助かるわぁ」

「たった今むいたばかりですから早めに召し上がってね」

「むいた?」

「ええ、ダイコンの皮。きんぴらにするとおいしいらしいですわよ」

「はぁ・・・」

「それにね、食物繊維が豊富でダイエットにもいいんですって」

「はぁ・・・」

「おくさまにぴったりかと思って。じゃ、失礼いたしますわ。オホホホホ」

「・・・・・きいいいぃぃー」






「こみ島さんのおくさまぁ」

「あら、こみ原さんのおくさま」

「あのねえ、きのう知り合いからお菓子の詰め合わせをいただいたら、包みにこんなきれいな紐が使ってあったんですのよ。キラキラしててお宅の畑の鳥よけにいかがかと思ってお持ちしましたの。よろしかったらどうぞ、オホホホホ」

「・・・・・くぬううぅ〜」






「こみ原さんのおくさま〜」

「あら、こみ島さんのおくさま」

「今日ね、夏野菜の片付けしたらいらないキュウリネットができましたの。おくさまのストッキング代わりにいかがかしらね。ほら、あの伸びきった網タイツ柄とおんなじことでしょ。よかったらお使いになってね。オホホホホ」

「・・・・・ふんがー」






「あ〜ら、こみ島さんのおくさま〜」

「まあ〜、こみ原さんのおくさま〜」

「ウチの猫砂でもおくらい遊ばせっ!」

「なんの、手製のナメクジ団子をかましてさしあげるわっ!」

「いてこまざますわっ!」

「なにをおっしゃってけつかりますのっ!」

「オーホホホホ」

「オーホホホホ」









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