部長ォ〜



「だからね、もう売ってる野菜なんか食べられなくなるから。安心ってだけじゃなくって、新鮮でしょ。採り立てのホウレンソウやトウモロコシ食べてみなよ。絶対ビックリするから。あの味を知ってしまったら、グルメぶってどこそこのレストランがおいしいなんて言えなくなるって。いやホント」

「ほう、こみ山くん、君も菜園をやっとるのかね」

「あっ、部長」

「奇遇だね、私もちょっとした菜園をやっとるんだよ」

「え、あ、そそそれはき奇遇ですね」

「どうだね、よかったら一度、君の畑を見せてくれんかね」

「・・あ、はは、そうですね。また、いずれ・・あのその・・・失礼しますー!」

「あ、おい、こみ山くん」






「はあはあはあ、ああやばかったぁ〜。この畑を部長に見られるなんて、とんでもない話だよ〜」

「何がとんでもないことだって?」

「あああっ! 部長、ど、どうやってここへ?」

「ツケたんだよ。ダテに25年も人のアゲアシをとってきた訳じゃないんだよ」

「うああぁぁ〜」

「なかなかきれいにしてるじゃないか。それに君がこんなに器用だとは知らなかったよ。これ、私・・だよね。よくこんな畝作ったね」

「いや、あの、それは・・・」

「あのハクサイと黄ニラの混植してるとこが口だね。なるほど、私の歯は黄色いし息は臭いもんね」

「いえ、その・・・」

「その横は・・ああ、フキダシになっているのか。あれはオクラだね。私のイヤミはねちっこいからねえ」

「・・・・・」

「少しだけニンジンが植わってるのは鼻毛をあらわしてるのか。なかなか芸が細かいじゃないか」

「・・・・・」

「何か端っこに木が植えられてるね。ははぁ〜、カツラの木だね。やっぱりばれてたか、高かったんだけどなあ、しかたないなあ」

「・・・あの」

「おいおい、頭がピーマンってのは古くないかぁ。私でも時代遅れだと思うぞ」

「・・・部長」

「あそこに溝が掘ってあるね。野菜くずを埋めるのかね。まるで私がのどを切られてるみたいだねえ、あはあは」

「・・・すいません・・・」

「こっちは胴体か、胸のあたりのキュウリは根性がひねくれてるって意味かな」

「勘弁してください・・・」

「おなかにスイカ・・・ああ、わかったぞ。黒いヤツだろう。私のハラみたいにでかくて真っ黒だもんな」

「申し訳ありませんでしたぁっ」

「・・・・・」

「・・・部長」

「こみ山くん」

「は、はいっ」

「提案があるんだけどね」

「な、なんでしょう?」

「足のところにミズナなんかどうかね。ほら水虫だろ、私、ははは」

「ぶ、部長ぉ〜・・・」






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