サトリ



「おい、畑を前にたたずむお前」

「えっ」

「お前、こみだろう」

「あの・・・」

「お前、今畑を眺めながら『何でウチのハクサイは巻かないのかな』と思ってただろ」

「いや・・・」

「それから『畑日記も更新しなきゃならないのに、ネタがないなあ』と思っただろ」

「ちょ・・・」

「ひひひ、『こいつは何者だ』って思ったな」

「なん・・・」

「『何で俺の考えていることがわかるんだろう』って、ちょっと薄気味悪くなってるな」

「そん・・・」

「心細くなってきたな。心配しなくても、すぐにとなりの奥さんが回覧板を置きに来るよ」

「かい・・・」

「ほうら来た。『あ、奥さん、この間はどうも。いつもいただいてばかりですいませんねえ。ウチはアレが大好物で、ええ、ホントにありがとうございました』ってこいつ思ってますよ」

「この・・・」

「あ、それから『回覧板は郵便受けに入れといてください』って思ってますから。ええ、

そこで結構です。手間かけてすいません。それじゃ」

「おい・・・」

「いいじゃねえか。『たまにはもっとましなものよこせ』って思ってる、なんて言わなかったんだから」

「てめ・・・」

「『てめえ、一発ぶん殴ってやろうか』だって。やめとけよ、となりの奥さん、まだこっちを見てるぜ」

「あわ・・・」

「あ、お前いま奥さんを見て、とても口に出せないようなこと思っただろ、この変態」

「ばか・・・」

「やだね〜。こっちが恥ずかしくなっちまうよ。あ、お前いま・・・」

「やかましいっ!」

「へ・・・」

「ろくでもないことをごちゃごちゃごちゃごちゃ抜かしやがって。あたしゃ、ちづるだよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・さらばじゃっ」

「こらーっ!」






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