「なあ、コカブよ。腹が立たへんかい」 「立たいでかい。おまえもか、ナスよ」 「あたりまえや。なんや、この畑日記は」 「そうそう、人を、いや野菜をバカにしとる」 「どうなっとんや、あの“縁起かつぎ”は。誰がどう考えてもタイトルは“ナス”やろ。わし、ちょくちょく出とるんやで。そやけどメインはあれだけやねん。ワキで出ても調子が悪いだのエビにかなわんだの、ろくなこと言われへん」 「あんたはまだええで。わしが出たのは“間引き”だけや。しかもその一回がメインや思うて喜んでたら、タイトルにはなられへんて、殺生やないかい」 「キュウリやトウモロコシは許せるで。やり始めの頃やし旬やしな。そやけど“おくら”や“アサツキ”なんざムリヤリやないか。なんであいつらがタイトル張れるねん」 「あの“こみ”な。あれはヘンタイやで。B級好きやねん。まっとうなこと書かれへんねん。そやからわしらをさしおいて“エビ”なんぞを主役にすえるのや」 「ホンマやで。“耕運機”がちょっとウケたらすぐ続編書きよって」 「近所の子供ら出したりしてな」 「根性がやらしいわ」 「許せんな」 「いてまおか」 「いてまお、いてまお」 「シュプレヒコール!」 「おー!」 「タイトルは野菜にしろー!」 「野菜にしろー!」 「メインを大切にしろー!」 「大切にしろー!」 「こみはボディーソープとシャンプーをまちがえろー!」 「まちがえろー!」 こうしてこみはうっかりリンスインシャンプーで体を洗ってしまったのだった。 |