10、カンムリについて
「はぁ〜」
「どうしたんですか、博士。ため息なんかついちゃって」
「どうも漢字作りが滞っとる」
「おお、一応は考えているんですね」
「もちろんじゃ。だがワシの悩みはそれだけではなーい」
「なんですか」
「ヤサイヘンやヤサイニョウの漢字はいくつかできたのに、ヤサイカンムリの漢字がひとつもできとらんのじゃ」
「すると根菜ですね」
「そこで、根菜界の大物、ダイコンを作りたいのじゃ」 |
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「大根と言ったら・・・『足』ですかねえ」
「ばっかもーん。ダイコンは口に入れるものじゃぞ」
「すいません。博士って案外デリカシーがあるんですね」
「当然じゃ。おまえだって中年男の足なんぞ口に入れたくないじゃろう」
「中年男? どっちかって言うと、私は女性の足を想像してましたけど・・・」
「何を言っとるんじゃ。オヤジに決まっとるじゃないか」
「あんなに白くてすべすべなのに?」
「ヒゲが生えとるじゃないか」
「ヒゲ?」
「ダイコンが足ならアレはすね毛じゃ。それにあの色と太さを考えたら、運動不足で太りすぎの中年オヤジに違いない。どうじゃ、その足をくわえたいか」
「品種によっても違うんじゃないですか? ヒゲのないのもあるでしょう」
「それは貼ってあった膏薬をはいだオヤジの足じゃ」
「細いのもありますよ」
「バカ息子にすねをかじられたのじゃ」
「青首ってのもありますが」
「オヤジは『クビ』と言われると青くなるものじゃ」
「ラディッシュは?」
「オヤジの靴下はメッシュじゃ」 |
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「・・・どうも、話がかみ合ってないような気がするんですが」
「ともかく、『足』はいかん」
「じゃあ、何か考えがあるんですか」
「何のために根菜をヤサイカンムリにしたか、ビジュアル面で考えてみろ」
「教えてくださいよ」
「発表しよう。『ダイコン』はヤサイカンムリに『下』じゃ!』
「なるほど! 『下』という字がダイコン本体で、ヤサイカンムリがダイコンの葉だ。しかもダイコンは土の中を下へ下へと伸びてゆく。そういうことなんですね!」
「いや、『股下』の『下』じゃ」
「なんじゃそりゃー!」
「ほかに考えようがあるか」
「ちょっと待ってくださいよ。ビジュアル面で考えたらその『ヽ』はなんなんですか」
「『ヽ』?」
「そんな記号ばっかりのセリフ、なんて言ってるのかわかりませんよ」
「『ヽ』とは何のことじゃ、言っとるのじゃ」
「本当のビジュアルなら『T』でしょ。だから 下−T=ヽ この『ヽ』のことですよ」
「種か」
「ダイコンに種はないでしょ。花が咲かなきゃ」
「ふふふ、わかっとるわい。つまりはこれじゃ!」 |
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「・・・なるほど」
「やっとわかったか」
「要するに『下ネタ』の『下』だったんですね」
「いや、『下品』の『下』じゃ」 |