8、「ヽ」について



「スイカはでかいよな」

「そうですね。普通に考えたら野菜の中では一番大きいですね」

「じゃあ、やはり『大きい』という意味のつくりをつけたいな」

「するとヤサイヘンに『大』ですか。ちょっと安易な気もしますが」

「もっと、こう『ヤサイヘンにドデカイ!』って感じにしたいな」

「そんな漢字がありますか」

「そこでじゃ、『巨』はどうかなと考えたんじゃが」

「おお、いいじゃないですか。またひとつキマリですね」

「いやいや、ここでさらにひとひねり」

「どうするんですか」

「ふふふ『臣』にしようと思うのじゃ」

「サイズが大きいというより、態度が大きいって感じですね。どうしてまた?」

「な〜に、『巨』に種をつけてみたんじゃ」

「種?」

「スイカの種じゃよ。ちょんちょんと、な」




「その理屈で行くと、やさいへんに『ヽ』で『ゴマ』ですか」


「それ、いいな」

「よくないよくない」

「ともかく、種はスイカの特徴だぞ。ぜひ取り入れたいじゃないか」

「じゃあ、もし『大』が採用されたら『太』になるんですか?」

「『犬』もあるぞ」

「スイカと犬がどうつながるんですか!」

「犬は庭に、スイカは井戸のつるべにつながれとるじゃないか」

「なんちゅうたとえですか」

「一番大きいということは、野菜の王でもあるから、種をつけて『玉』でもいいな」

「元々が玉みたいだから、『王』に種がついたのだとは思われませんよ」




「そうじゃ、スイカは英語で『ウォーターメロン』だからヤサイヘンに『水』・・に種をつけて『氷』にしよう」


「なんで漢字を作るのに英語圏まで遠回りせにゃならんのですか!」

「『全』に種をつけて『金』でもいいな」

「『全』はどこからでてきたんじゃい!」

「うるさいやつじゃな。だったらもう『全』でも『王』でもいいから・・・」

「うわわわ〜、種をつけるなー!」

「ふん、点で話にならんな」

「おもしろくない!」

「ともかく、種がつけたいんじゃー!」

「何でそんなに種にこだわるんですか」

「いや・・あの・・」

「はっきり言いなさい」

「その・・・友人の種田君がね・・・」

「はぁ?」

「あの・・・手紙が来てね・・・」

「見せなさい」

「あっ、そんな無体な」

「え〜と、なになに?

  『カルピコよ たまにはワシも 出してくれ    (詠人 種田米床火)』

 なんじゃこりゃ?」

「ううう、すまん、米ちゃん・・・」










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