7、読み方について



「おい、ニガウリを知っとるだろう」

「はいはい、ゴーヤのことですね」

「うむ、あれは沖縄の名産品だし、形もなんとなく似ているから、『縄』のつくりを使ってはどうじゃろう」

「いいですね。イボイボ感もあるし、尻尾のところがツルっぽいし」

「そう、ツル性だからヤサイニョウじゃな」

「いやあ、またひとつ決まりましたね」






「ただひとつ問題がある」

「なんでしょう」

「この字を『ニガウリ』と読むか『ゴーヤ』と読むかじゃ」

「はぁ?」

「ほとんどの野菜は、メインの読み方があるんじゃが、これはどっちかのう」

「どっちでもいいんじゃないですか」

「おい、これは学問だぞ。そんなあいまいなことでどうする」

「でも、普通の漢字にだって音読みと訓読みがあるじゃないですか」

「音読みと訓読み?」

「漢字博士が音読み訓読みに『?』をつけてどうするんですか。そうだ、カタカナっぽい『ゴーヤ』を音読み、ひらがなっぽい『ニガウリ』を訓読みってことでどうですか」

「なるほど、たまにはいいことを言うな」

「うふふ、そうでしょう」

「だがだが、まだまだあまーい!」

「なんですか、いま誉めたばっかりなのに」

「ワシらは新しい漢字を作っとるのだぞ」

「そうですよ」

「だったら、音読み訓読み以外の新しい読み方を考えてもいいじゃないか」

「・・・どういうことですか」

「たとえば、『トウモロコシ』は訓読みで『コーン』はコーン読み」

「駄洒落じゃないですか。しかも英語だし」

「ならば『ナンバ』は大阪読みじゃ」

「確かにトウモロコシのことを『ナンバ』という地方はありますけど、大阪の『ナンバ』は地名じゃないんですか」

「たとえば『ダイコン』は標準読みで『でゃ〜こ』は名古屋読みとか」

「怒られますよ〜」

「たとえば『カブ』は一般読みで『カブどす』は京都読み」

「読みじゃないでしょうが!」







「たとえば『スイカ』は当然読みで『スイカズラ』は静岡読み」

「別のモノになっとるじゃないですか!」

「たとえば『ラッカセイ』は普通読みで『パラシュートウ』はアメリカ読み」

「それは『ラッカサン』やがな!」

「いやいや、最後の『トウ』は豆という字を書くのじゃ」

「野菜を一文字で表したいんと違たんかいっ!」

「というわけで『ゴーヤ』はウチナー読みで『ニガウリ』はヤマトゥ読みじゃ」

「じゃあ『レイシ』は?」

「・・・はぁ?」

「レイシですよ。ゴーヤのことをレイシっていうでしょ」

「う〜ん・・・・・あ、お前の背後に髪の長い女性が!」

「それは『霊視』でしょ。『レイシ』ですよ、レ・イ・シ」

「う〜んう〜ん・・・」

「さあさあさあさあ」

「わかった。こうしよう」

「どうするんですか」

「つづく・・・」

「・・・つづかないくせに」












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