5、目的について



「おいっ、ついに判明したぞ」
「あ、博士。どこへ行ってたんですか。何してたんですか。どうして帰ってきたんですか」
「何が判明したかは訊ねんのか」
「あー、何が判明したんですか?」
「湯飲みじゃ」
「湯のみ?」
「お前、当講義の目的を忘れたか」
「目的? 講義?」
「こらこら、『講義』にまで『?』をつけるなよ」
「なんでしたっけ?」
「ほれ、サカナヘンの湯飲みに対抗して、ヤサイヘンの漢字で湯飲みを作ろうと誓ったじゃないか」

「はいはい、そんな話題もありましたね」
「ワシはサカナヘンの湯飲みに漢字がいくつ書かれておるか、敵状視察に行っておったのじゃ」
「ええっ、じゃあ一人ですし屋に行ったんですか。ずる〜い」
「いや、せともの屋じゃ」
「な〜んだ」
「結構大変だったんだぞ。湯のみって筒になっとるじゃろう。だから同じ字を何回も数えてしまってな。653まで数えておかしいなと思ったんじゃ」
「そこまで数えてから気づいたんですか」
「うむ、どうも見たような字があると思ってな」
「そらそうや」
「でも、デジャブウかと思って、あと817数えた・・・」
「・・・」
「これは同じところを何度も数えておると気づいたワシは、ひとつの字に印をつけることにしたんじゃ」
「その字を覚える、ということではいけなかったんですね」
「で『アジ』にすることにした」
「ほう、どうして」
「アジの開きが好きだからじゃ」
「・・なるほどね」
「ところがどれだけ探してもないんじゃ」
「そんなはずないでしょ」
「ないんじゃよ、サカナヘンに『味』が」
「『アジ』じゃないじゃないですかっ!」
「仕方がないから『サンマ』にしたよ」
「『サンマ』は知ってたんですか」
「うん、サカナヘンに『参』」
「それが『アジ』じゃないですか!あんたホントに漢字博士かっ!」
「その字にペロリと印をつけた」

「・・・ペロリ?」
「うむ、匂いでわかるのじゃ」
「匂い・・・?」
「数えていって、サカナヘンに『参』だと思ったら匂いを嗅いでみるのじゃ」
「サカナヘンに『参』だとわかったら、匂いをつけなくてもいいんじゃないですか」
「念には念じゃ」
「ともかくそれでわかったんですね」
「いや〜、『鯵』を最初に数に入れたかどうかわからなくて、6回数えなおしたわい」
「・・・」
「数字には弱いのじゃ」
「漢字にも弱いでしょ」
「えへ」
「ごまかすなー! で、結局サカナヘンの漢字はいくつあったんですか?」
「四十八手じゃ!」
「『手』じゃないっ!」

「ともかくヤサイヘンの漢字は48必要なのじゃ」

「ええ〜、まさかこのコーナー、あと48回やるつもりじゃないでしょうね」

「何を言う! 湯のみができたら『完全網羅原色ヤサイヘン漢字大辞典全十六巻付録つき』を作るのじゃー!」

「作るなー!!」





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