4、つくりについて



「というわけで、ヤサイヘンはカタカナの『ヤ』に決定」

「ええ〜、ダサ〜い、タンジュ〜ン、ものたり〜ん」

「サボッとったくせにそんなこと言うやつはこうじゃ。バシッ!」

「痛ッ! ちょっと博士、何でたたいたんですか」

「前回、背中をかくのに使った『ヤ』じゃ」

「そんなゴツゴツしたもので・・・」

「やかましい! 今度サボったら『必』をぶつけるぞ」

「なんだか痛そう・・・」

「そりゃ、痛い。必ず痛い。なんなら内緒でノギヘンもつけるぞ」

「遠慮しときます。どうぞ講義を」

「さて、今回は『つくり』についてのはなしじゃ。知ってのとおり、漢字とは部首とつくりか

ら成り立っとる。部首でジャンルを限定し、つくりでそのジャンルの中の何であるかを具体的

に表現しておるのじゃ。部首はヤサイヘンに決まっているから、つくりでどのように個々の野

菜を表現するかを考えてみよう」


「ああ、たとえば、魚ヘンに平で『ヒラメ』みたいなことですね」

「その通り。色、形、性質などの情報をつくりに込めるのじゃ」

「なるほど」

「しかし、その情報を『ヒラメにおける平』のように、その字の意味であらわすより簡単でわ

かりやすい方法がある」


「ほう、それはなんですか」

「見たまんまじゃ」

「見たまんま?」

「今の漢字の起源は象形文字じゃ。それは見たままを字にしたもの・・・」

「え〜と・・・どういうことでしょう」

「例を挙げてやろう。『抗』という字を知っとるか」

「知ってますよ、そのぐらい」

「この字のつくり、ナスに似とると思わんか?」

「は?」

「そっくりじゃろう、ナスに」

「え、ええ・・」

「たとえば『操』のつくりはトウモロコシに見えんか?」

「むむ、まぁ・・・確かに見えないことも・・・」

「たとえば『兆』」

「そ、そんな野菜がありますか」

「これは輪切りにしたキュウリじゃ」

「あ、ああー、キュ、キュウリだ・・・キュウリだぁ〜」

「どうじゃ、見えるじゃろ、見えるはずじゃ、見えろー!」

「見える・・・博士、見えますぅ〜」

「ようし、これでお前も一人前じゃ〜」

「見える〜見える〜『与』がキュウリの苗に、『衆』がスギナの根っこに〜。『&』はハモグ

リバエの食い跡に見えるぅ〜・・・」


「おおっ、そこまで見えるようになったか!」

「見えますっ、博士。見えますう〜」

「・・・ワシは、そこまではちょっと・・・」





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