畑 日 記

  「耕耘機」                                     2000/8/20


色とりどりの野菜におおわれていた畑に、空き地が目立ち始めた。「息子が一緒に住もうと言ってくれるものだから」と言い残して、長く付き合ってきたご近所が次々と去って行く、古い住宅街みたいだ。


わが町内からは、まずキャベツ、レタス、ブロッコリーが去っていった。続いてゴボウとニンジン。コマツナ、チンゲンサイ。トウモロコシとエダマメも残り少ない。トマトやキュウリも長くはないだろう。しかし、これも自然の摂理。旬を大切にし、野菜の習性に合わせるという主旨からしても、仕方のないことなのだ。とは言っても、やはり溜め息をついてしまう。はあ〜、また耕さなきゃならない。


人類が文明を手にしてから幾星霜。いまやパソコンで個人が自分の趣味を世界中にばらまくような時代だ。にもかかわらず、我が家では旧態依然の耕作をおこなっている。


畑が空くとスコップで土をひっくり返す。何日か乾かした後、石灰、元肥え、腐葉土などをまいて、スキで土をほぐしながら混ぜ込む。再び何日か寝かせてから、クワでうねを作ってレーキでならし、やっと種蒔きや苗の植付けができるのだ。なぜこんなしんどい方法にこだわるかというと、土の上下が入れ替わり、日光で殺菌できるのがひとつ。深く耕せる点がもうひとつ。それに手作業だと、石やゴミを取り除くことができる。耕耘機を使えば早くきれいにできるが、行き届かない面も出てくるものだ。もちろん、その都度汗だくになるが、それも百姓の醍醐味と思い、楽しんでいる。


うそじゃー、そんなの自己欺瞞じゃー、こだわってなんかおらんのじゃー。本当は耕耘機が欲しくて欲しくて欲しくて欲しくてたまらんのに、あのヨクブカドケチオニヨメが「金ない、置き場がない、その気もない」と拒否しつづけているのじゃー。もし宝くじが当たったら、パワステ、パワーウィンドゥ付きの4WD2シーターV6エンジン金メッキダイヤモンドちりばめ耕耘機を買ってやる。もし私が有名人になって「関口宏の東京フレンドパーク」に出演したら、ダーツの的は二つとも耕耘機にするだろう。もし私が衆議院選に立候補したら公約は「一家に一台耕耘機」にするつもりだ。


人力農業継続中の今、手にマメを作り、腰は痛くなり、尻にはアセモができ、身体中土にまみれている。それでいて痩せない。なぜだー。


妻が言った。
「それはね、ビールをいっぱい飲むからだよ」
なるほどなぁ。



| home | sitemap | top |