畑 日 記

あなたのお名前なんて〜の?                            2002/8/20

買い物カゴをぶら下げて、園芸店の種売り場を徘徊した人は「○○菜」という商品の多さに「ドギモ」の一本や二本は抜かれたことがあるだろう。地名、人名、語呂合わせ、英語、ヤケクソ、意味不明。あの菜の名の膨大な数を考えれば、コマツナ、野沢菜、チンゲンサイなどはほんの一握りのスターだったことがわかる。


こんな話題を出すと「ドナド菜なんてのがあったりしてな〜」と冗談を言う奴が現れる。そいつの冗談が通用することはありえない。たとえば「全国菜普及委員会会長」なんて人が審判をしていたとする。「バナ菜」「あります」「カタカ菜」「あります」「ウクライ菜」「あります!」どれだけボケても「それ、あります」って言われるのだ。「菜」は全ての日本語を征服した。つまり「完全網羅全国菜辞典」は「広辞苑」と同等の項目数があるということだ。おそらく「あ菜」で始まり「んなあほ菜」で終わっているのだろう。


そのような熾烈な菜界にもひねくれ者はいる。菜でありながら「○○菜」と名付けなかった一派だ。そのひとつに「山クラゲ」というのがある。


ちょっと想像してみよう。「クラゲ」と名付けられた植物。私にはふたつのパターンしか思いつかない。リンゴのように枝からクラゲがぶら下がっている図と、チューリップのように地表にクラゲが生えている図だ。もちろん「菜」なのであるから、後者には違いないのだが、植物の形態として、クラゲは逆立ちしているはずだと思う。なぜなら植物は地表に接している部分から放射状に伸びるのが普通だからだ。もし私が名付け親なら、この逆立ちクラゲを「山クラゲ」などと名づけずに「温泉マーク」としたことだろう。


他にも海の生物にその名の由来をもつものがいる。「オカヒジキ」これは不愉快である。「海にあるひじきという素晴らしいものに、形態、味、食感、栄養素などが似かよった陸上の植物」という言い回しに感じられるからだ。なぜ「ヒジキ菜」としなかったのか。それならば、「ヒジキに似た菜」としてこんなにも反感を買うことはなかっただろうに。ともかく、この混乱を収束させるためにひとつの案を提示しよう。「オカヒジキ」は「オカヒジキ」のままでいいから「ヒジキ」のことを「ウミオカヒジキ」と呼ぶようにしてはどうだろう。


おっと、「オカノリ」てなものがいた。これはオカヒジキのように簡単には行かない。そもそも「ノリ」が「海苔」つまり「ウミノコケ」なのだ。「陸の海の苔」これはただの「苔」じゃないか。これを先ほどの「オカヒジキ」の案に当てはめると「ウミオカノリ」となる。海の陸の海の苔という意味だ。うわーっ、なんとメンドクサイウットウシイ話なんだ。これはもう「オカ○○」というネーミングの仕方が間違っているとしかいいようがない。


確かに安易過ぎる。先のことを考えてない。もし、真鯛のような味の野菜があったとしたら「オカマダイ」と呼ぶのか。ちりめんじゃこのような花を咲かせる植物は「オカチリメンジャコ」略して「オカチメンコ」なのか。シナモンの香りがしたら「オカシナモン」と名付けるのか。


なにっ、それは「ヘリクツ」だって? そんな靴どこに売っているのか?

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