畑 日 記

  「トウモロコシ」                                2000/7/22  

まだ、夢の中でも寝ていたのだが、ウルトラマンが、ピピピ、ピピピとスペシューム光線を小出しにしている音で目が覚めた。妻を起こさないように、懐かしのヒーロー目覚し時計をとめて窓の色を見た。夜はしっぽをわずかに残してどこかへ行ってしまった。


早朝4時30分。普段ろくなことをしない日本政府が、せっかく「海の日」という新しい休日を制定してくれたのに、なんでこんなに早起きしなきゃならんのか。全てはトウモロコシのせいだ。


トウモロコシは連作障害が一切出ない。吸肥力が優れているため、後作の肥料配合が簡単だ。根が張るので抜いた後の土が柔らかい。だから畑に隙間があるならとりあえず植えておきなさいと本に書いてあった。私は本様の言うことには逆らわないのだ。


そしてトウモロコシのもうひとつの特性。夜のうちに甘くなり、夜明けと共に糖度が減っていく。会社から帰った後、「いやー、まだ日は高いし、トウモロコシでも収穫するかぁ」なんてやってると最もまずいトウモロコシをとることになるのだ。


パンツにランニング姿のまま畑に出る。やつらの毛は人間と逆で、白から黒へと成熟してゆく。しなやかからガサガサは人と変わらない。コゲチャのチリチリを選んでもじいていくのだが、早朝の静けさの中では凄まじい破壊音がする。皮を剥ぐときもすごい音だ。トウモロコシは虫の入居率がかなり高いので、人様に配ろうと思ったらすっかり裸にしてみなければならない。虫がいるのは主に芯の部分だし、食べるのに支障はないが、やはり虫付きでは嫌がられるだろう。茹でる湯にはちゃんと虫のだしが出てるんだけどね。


6時前までかかって24本を茹であげた。試食試食。おおー、茹でたての匂いがたまらん。おおー鮮やかになった黄色の美しさ。この粒の几帳面な並び方。おおおー、この甘味。早起きの甲斐があった。妻を起こして、さっそく朝食の皿にのせる。見映えの良いのを配り、残りは一粒ずつにもじいて冷凍にする。去年も冬まで食べられた。トウモロコシって、便利な作物だなぁとつくづく感心した。


翌朝、ウルトラマンに起こされた。4時半。うおおー。タイマーセットを戻すの忘れとった。




| home | sitemap | top |