畑 日 記

               「間引き」                               2000/10/29

辛い農作業の数ある中で、私がもっとも嫌いなのが「間引き」だ。体力的にも精神的にも人道的にも大嫌いなのだ。コーウンキを購入してあの辛いコーウン作業が「タラッタラッタ」とできるようになったのだから、もし「間引き機」というものが存在するのなら喜んで購入しよう。二万円までなら。

今回間引いたのは、ダイコン、ニンジン、コカブの三種だ。ダイコンはかまわない。点蒔きのダイコンは簡単だ。しかも最終間引きだったので苗は大きくて充分食べられる。間引きの名を借りた収穫と言ってもいい。

ニンジンも許せる。筋蒔きで密集してはいるが適当につまんでいけばいい。何しろやつらは食えない。パセリの代わりぐらいにはなるらしいが、それは大きくなってからでいい。しかもニンジンの苗は見通しがいいから妙なものが潜んでいる心配がない。

コカブは辛い。めんどくさい。憎い。顔を地面すれすれに持っていって、よく育った苗を見分けなければならない。抜く時も細心の注意を払わないと、太い指は残すはずの苗も一緒につまんでいってしまう。また、このときの姿勢が腰にこたえる。許されるものならば、ほふく前進で作業がしたい。

コカブと言うだけあって葉は小さいくせに「見せてやんないよー」とばかりに何かを隠している。いたっ。超ウルトラニクニク害虫、畑の犯罪者ヨトウムシだ。ピンセットは水道の横だ。石ころでつぶしてやれ。ぷち。ぎゃっ、汁が顔に飛んだ。水道に洗いに行く。それもこれもみんなコカブのせいだ。

バケツ一杯間引いた。困ったことに、これが食えるのだ。双葉と枯れた葉っぱを取り除き、よく洗って揃え、根を切り落としておひたしにするとけっこういける。間引きとはいえ食べられるものを捨てたりしてはバチが当たる。掃除にとりかかろう。

四十五分経過。きいいいいい!もうやっとれん。バケツにほりこんでザブザブ洗う。もう双葉も枯葉も根っこも全部食う。大体カブは根っこなのだ。家で一番大きな鍋にガンガン湯を沸かす。雑草や砂が混じっていてもみんな食う。元々畑のものばかりなのだ。塩を入れ、間引いたコカブをほりこむ。アブラムシやアオムシが付いていても残さず食う。野菜を食って育った動物性タンパク質じゃないか。洗い桶に移し、雑巾のように洗って絞る。どんぶり一杯のおひたしが出来上がった。さあ、食うぞ。食ってやる。ガー。

楚々として、とても落ち着いたお味でございました。

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