作品の裏側( 四月まえ )


 三重県伊勢地方は、春が早い。
三月なると、ポカポカ陽気で海の水面が鏡みたいな日がある。そんな水面の上では、風は丸くしか吹きようがないんじゃないかと、思ったりしている。

 穏やかである。
入園前の子供のいる家族のように、ベレー帽をかぶせたり、カバンを持たせてみたり、子供も何か遊園地に出かけるみたいに、家中がはしゃいでいる。
 規則正しさに、縛られる第一歩だとも知らないで、踏み出そうとしている。ものの感じ方も、怖がりだった子が、一歩一歩成長していく。そんな家族のいる家の周りでは、風は、強く吹いて走り回りたいのに、丸く吹くしか仕方ないんです。

 私が風なら、そうします。


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