畑 日 記

               「草取り」                            2000/8/7

降ったなあ、照ったなあ、と思っていると、畑は草っ原へと変貌をとげている。キュウリが早い、カボチャがすごいと言ったって、雑草の成長の早さにはかなわない。一度草取りをしてしばらくもしないうちに、畑一面に産毛のような雑草が伸び始めている。しかもやつらは野菜の苗とは違って、確実に全部が成長するのだ。「この日曜は雨だからのんびりしよう」などと呑気なことを言っていると、とんでもないことになってしまう。そして今、とんでもないことになっている。仕方ない。草取りをしよう。

草取りは手でやらなければならない。いろんな草取り道具が市販されているが、全てのウィルスに効果のあるワクチンが存在しないように、全ての雑草に対処できる草取り道具はない。地べたにへばりつくやつ、ポキポキ折れるやつ、地下でつながってるやつ、根がやたら太いやつ、種をバチバチ飛ばすやつ、汁の出るやつ。これら全てに対応できるのは自由自在に操れる「手」だけなのだ。まとめてつかんで引っこ抜くのも、野菜の脇から生えてるのをつまむのも臨機応変。しかも持ち替える手間いらず。手に勝る道具なし。

草取りは一心不乱にやらなければならない。「この子はまだ若い」と情けをかけたり、「こいつらの悲鳴が聞こえたら・・・」などと想像をたくましくしてはいけない。目にはいるものは根こそぎやっつけるのだ。自分の通った後には、当たり前だが草一本残さない心意気でやるのだ。町を焼き尽くすゴジラのように。やつらのコロニーの復興は、戦後の日本よりめざましい。

草取りは先を見てはいけない。人生は振り返るなというが、草取りの場合、必ず後ろは美しく、前は荒れている。前を見て、あとこれだけの草を取らなければならないという現実にさらされた途端「やっとれるかい」と思うのは当然の成り行きだ。だからこそ、しゃがんでうつむいて目の前の敵だけに注意を集中するのだ。

目の前の草を、手で、一心不乱に。目の前の草を、手で、一心不乱に。

うーん、腰がしんどくなってきた。草取りは時々背筋を伸ばさなければならない。ありゃ、膝が、いたたた。草取りは時々座って休まなければならない。およ、めまいがする。なんだか気持ち悪い。頭がガンガンする。おかしい。どど、どうしたんだ。

草取りは日射病に気をつけなければならない。スンマセン、ギブアップ。

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