畑 日 記

「極楽」                               2001/8/29

土は重いし、草は丈夫。虫はしつこく、天気は意地悪。今日も天地返しはこたえた。腰は痛むし肩はこる。ああ、癒されたい・・・。そうだ。こんな日はあそこへ行こう。農業従事者の憩いの場、あの極楽へ。さあ、みんな、私についておいで。

到着。そう、ここが現代の極楽、マッサージ椅子売り場だよ。売り場とは名ばかりで、本当は売る気なんてないのさ。ここを通る店員のあきらめ顔を見たらわかるだろ。オモチャ売り場のお試しコーナーの大人版だと思えばいいんだよ。

さて、本当の極楽を味わいたければ、普段からのチェックが大切なんだ。まずは店選びから。何と言っても台数、種類が多いところがいいね。混雑しないし選べるからね。少ない店の機械は壊れてることが多いよ。店に気合が入ってないんだね。それから機械の間隔が広いところがいい。あまり接近してるとコントローラーが隣と入れ替わってたりするから注意が必要だ。売り場は隅っこがいいね。店員やお客さんが前を通るのは落ち着かないものだよ。

注意書きの多いところもいやだね。「一人で長時間利用しないでください」とか「きれいに利用しましょう」なんて書いてあると、気分が台無しだね。極楽に注意書きなんて必要ないよ。「ご利用の際は係までお申し付けください」なんて論外だね。コンセントが少ないところにも気をつけて。一度座ってから立ち上がってコンセントを入れに行くのはめんどくさいし、みっともないからね。自分でコンセントを見つけるのは難しいよ。タコ足配線の無法地帯だからね。

次は椅子自体の選び方。メーカーや機種は個人の好みだけど、革張りは避けた方がいいよ。アレは、ぎゅっぎゅってうるさいからね。リクライニングは電動を選ぼう。手動はちょうどいい位置に止まらないんだ。背もたれと足が別だしね。ビニールカバーが着いてないのはいいよ。商品名の書いてあるクッションは椅子として使うときのものなんだ。アレをめくって使うと肩への食いつきがちがうよ。

じゃあ、いよいよ座ってみようか。恥ずかしがっていちゃいけないよ。いいかい、人間には2種類いるんだ。この椅子に座る人と座らない人さ。その両方がさらに2種類に分かれる。前者は当たり前のように座る人とびくびくしながら座る人に。後者は座る必要がない人と座る度胸がない人さ。ときどきいるんだよ。ずっと狙ってたくせに「アラ、こんなところにいいものが」って振りをして座る人が。僕らプロの目から見たら「シロートだな」って一目瞭然なのにね。僕らは勇気を出して堂々と座ってみようじゃないか。

おっと、最低限のルールだけは知っておかなくちゃね。まず、子供とずぶぬれの人とマッサージ椅子を持っている人は座っちゃだめ。説明しなくてもいいね。おまかせコースを2回続けてはいけないよ。誰もいないようでも、遠くでこっそり待ってる人がいる可能性もあるからね。もちろん、寝るのはご法度だ。よだれなんてもってのほか。気持ちがよくても声は出さないように。気持ち悪いからね。終わったらリクライニングやクッションは戻しておこう。それが礼儀ってものだよ。

最後にちょっとアドバイスしとこうかな。通りがかりの人と目が合わないくらいにはシートを倒しておこう。知ってる人には気をつけよう。目を閉じるなら眉間にしわを寄せよう。寝ていると思われないし「ああ、この人効いてるな」って感じが伝わるからね。足元においてある足裏マッサージ器は無視しよう。同時には使いにくいし、靴を脱ぐときにはじゃまなぐらいだ。

さあ、あとは経験を重ねて体で覚えよう。気を抜いちゃいけないよ。この売り場は移動が激しいからね。観察、記憶、堂々と、だよ。ようし、準備はOK!レッツ極楽!

ところで、これって「畑日記」かなあ。

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